競い合ってこそ人材は育つ
自民党総裁選挙が9月8日告示、20日投開票で行われる予定である。とはいっても、いまのままでは安倍首相以外に立候補者はいない模様であり、安倍首相の無投票再選の可能性が濃厚になっている。
かつての自民党では、各派閥の長がそろいもそろって現総裁、総理を支持するなどということはあり得なかった。主流派、反主流、あるいは中間派と分かれて、互いにしのぎを削ったものである。だが、それも中選挙区制時代の遠い昔話になってしまった。
よく「派閥の弊害」ということが言われた時代があった。派閥が金権政治のおおもとだということも言われた。実際に弊害もあったであろう。だが定数3人から5人の中選挙制の時代には、自民党の場合、派閥の違う公認候補が2人~3人と立候補し、同じ政党で議席を争ったものである。それぞれの候補者のバックには、党ではなく、派閥がついていた。自民党議員は、野党と競い合うだけではなく、自党内でも競い合いがあったのである。これが自民党議員を鍛えた。
それぞれの派閥に特徴もあった。安保・外交政策では、タカ派、ハト派などの違いがあり、経済政策でも、成長重視か、財政重視か、などの違いがあった。それぞれの派閥で勉強会も開かれ、先輩が後輩を育てるという役割を派閥が担っていた。佐藤栄作首相の後継を決める際には、「三角大福」が争った。三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫の4人である。後には、ここに中曽根康弘が加わり「三角大福中」とも称された。