中国をどう見るべきか。経済規模と地政学において大きな存在感を示す一方、目先は経済困難が深刻化し、究極の弥縫策(びほうさく)と見える対策が相次いでいる。"Contingency plan"(不測事態対応策)が発動されつつあると見るべきかもしれない。
このようにねじれている中国の現実、そのどこに注目するかで、人々の対中イメージは全く異なる様相を呈すると言える。目先“マドルスルー”(muddle through:やり繰りでしのぐ)、中期警戒、長期悲観が適切な見方ではないか。
(1)圧倒的に高まった存在感
中国は圧倒的な経済規模を見せつけている。2014年購買力平価(PPP)ベースで中国は米国を抜き世界最大の経済大国となった。また外貨準備高は3.7兆ドルと第2位の日本の1.2兆ドルのほぼ3倍と突出している(その定義が異なるので単純な比較はできず中国の対外金融力は過大評価されているのではあるが)。
これらのデータは19世紀初頭、世界GDPの3割を占めていた清帝国のプレゼンス(アンガス・マジソン歴史統計による)が再び復活するとの長期展望を正当化するものとなっている。特に過半の欧州人は西欧・米国から中国への重心の歴史的シフトを所与のものとして受け止めつつある。
6月、アメリカのピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)という世論調査会社が、世界40カ国の国民を対象にした、アメリカがスーパーパワーのポジションを維持できるのか、それとも中国がそれにとって代わるのかについての世論調査結果を発表した。何と、ヨーロッパの全ての国でこれから中国がスーパーパワーになり、アメリカを代替するという見方が多数派であった。
アメリカにおいても見方は拮抗している。その中で唯一日本だけが77%と圧倒的な比率でアメリカのスーパーパワーが維持されると見ている。つまり、世界の常識は今やアメリカから中国へと世界のスーパーパワーがシフトすると見ているのである。