5月26日、中国国務院新聞弁公室が「中国の軍事戦略」国防白書を発表した。
中国は1998年以来、隔年で「国防白書」を発表しており、今回で9回目となる。もともと偶数年の発表のはずが、近年では遅れがちになり、前回の白書が2013年4月で今回はさらに遅れて5月になった。発表が遅れたことの説明はされたことがない。
中国が国防白書を発表するようになったのは、筆者が承知しているところでは、1994年からスタートした「ASEAN地域フォーラム(ARF)」(ASEAN拡大外相会議メンバーを中心とした安全保障対話)の場で参加国の軍事透明性確保のため「国防白書」の刊行が合意されたことによる。もともとわが国や米国が中国の軍事透明度の低さを指摘してきた経緯もあって、中国はそれに形式的に応えたことになる。
しかしながら、「国防白書」を名乗っているにしては、あまりにボリュームに欠けるというのがこれまでの実態であり、今回の白書もその例にもれない。そこに中国の「やる気の無さ」を見るのは当然であるにしても、国防の実態を秘匿するのが中国にとり当然の状況下にあって、その国防政策の一端を公式文書で対外的に示すという意味では、貴重な文献であることは間違いない。
1998年から2010年までは、「中国の国防」のタイトルに年号を付けるというスタイルで、一見すれば「網羅的」な内容と捉えがちだ。だが、毎回その目次構成は変わり、前回の白書の内容とどう変わったのかが分からないような、不親切というべきか意図的な編集がなされてきた。