先日、市場関係者の間にちょっとしたショックが広がった。何とか横ばいで推移したと思われていた2014年の給与がマイナスに下方修正されたからだ。
昨年(2014年)の春闘は、政府が企業に対して異例の賃上げ要請を行ったことから、15年ぶりの高水準で妥結した。今年の春闘も昨年に引き続き高い水準の賃上げが実現する見通しである。しかし、給与全体でマイナスが続いているということは、中小企業の昇給が十分に進んでいないことをうかがわせる。
賃金がなかなか上昇しない一方で、労働者の残業は増え続けている。3月末には少子化対策大綱が閣議決定され、仕事時間と生活時間のバランスが取れるよう、職場における働き方を見直す方針が示された。
目の前にある課題への対処方法としては、賃上げ要請やワークライフバランスの追求はそれなりに意味があるかもしれない。だが、なかなか賃金が上がらず、残業時間も減らない背景には、日本企業特有のビジネスモデルと雇用環境という根本的な問題がある。この問題に正面から取り組まない限り、状況を大きく改善することは難しいだろう。
結局、2014年の給与は前年比マイナスだった
今年2月に厚労省が発表した毎月勤労統計によると、2014年の所定内給与は24万1338円で前年比横ばいという結果だった。昨年は政府からの要請もあり、大企業を中心に2%以上の賃上げが実現した。春闘は大企業が中心であることから、その効果は限定的とも言われるが、全体の水準が前年比でマイナスにならなかったのは、政府による賃上げ要請の効果によるものと理解されている。今年の春闘でも同様の賃上げが実現すれば、いよいよ前年比プラスに転じることが期待されていたわけである。