本記事は3月19日付フィスコ企業調査レポート(ケネディクス)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 柴田 郁夫

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不動産市況の回復や収益基盤の強化で新たな成長ステージへ

 ケネディクス<4321>は、国内最大の独立系不動産アセットマネジメント会社である。J-REITの5銘柄(2015年2月末現在)や私募REITのほか、多数の私募ファンドを運用しており、受託資産残高は1.4兆円を超える。国内外の機関投資家や年金基金、個人投資家など幅広い投資家層を顧客基盤に持つ。1995年の設立以降、日本の不動産証券化ビジネスの勃興期から活躍するとともに、不動産アセットマネジメント会社の草分けとして業容を拡大してきた。2008年のリーマンショックによる金融引き締めや不動産市況の悪化の影響を受け、一時は資産圧縮と投資の凍結を余儀なくされたが、不動産市況の回復や収益基盤の強化により同社の業績も勢いを取り戻しており、新たな成長ステージに入ったとみられる。

 2014年12月期決算は、営業収益が前期比16.7%増の26,212百万円、営業利益が同17.8%増の8,147百万円、経常利益が同31.3%増の6,406百万円、当期純利益が同143.9%増の4,844百万円と大幅な増収増益となった。受託資産残高の着実な伸びに加えて、好調な不動産市況を背景に保有不動産の売却が順調に進んだことが業績の伸びに貢献した。

 同社は、2015年12月期を最終年度とする中期経営計画を1年前倒しで達成したことから、新たに3ヶ年の中期経営計画を発表した。安定的な収益基盤であるノンアセット事業をコア領域として再定義するととともに、a)アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長、b)共同投資を中心とする不動産投資事業の推進、c)財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求を重点施策とし、2017年12月期には、同社コア領域の収益力を示すベース利益4,000百万円、3年平均ROE8%の実現を目標としている。

 2015年12月の業績予想については、営業収益が前期比17.6%減の21,600百万円、営業利益が同7.9%減の7,500百万円、経常利益が同4.6%増の6,700百万円、当期純利益が同23.8%増の6,000百万円と見込んでいる。保有不動産の売却が一巡することで減収となるものの、総合的な収益力を示す当期純利益は増益基調を継続する見通しである。また、受託資産残高の伸びによりベース利益も同106.5%増の2,700百万円と大きく伸長する想定であり、期末配当は前期比1円増の4円を予定している。2015年12月期は、2015年2月に上場したケネディクス商業リート投資法人<3454>に加えて、ヘルスケアREITの上場も計画している。

 弊社では、中長期的な視点から、ヘルスケア分野やインフラ分野等、今後、市場拡大が期待できる新たな対象資産への取り組みや不動産関連サービスの拡大、海外展開などにも注目していきたい。

Check Point

●14年12月期はアセットマネジメント事業が好調
●1年前倒しで中期経営計画を達成、新たな中期経営計画を発表
●14年12月期の期末配当で復配を決定、今期は1円増の4円を予定

事業概要

アセットマネジメント事業と不動産関連事業がコア領域

 同社は国内最大の独立系不動産アセットマネジメント会社である。日本の不動産投資ファンドの草分けとして業容を拡大し、受託資産残高は1.4兆円を超える。

 不動産投資ファンドとは、投資家から集めた資金でオフィスビルやマンション、商業施設などの不動産を購入し、そこから得られる賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組み(金融商品)である。広く一般の投資家から資金を集めるREIT(不動産投資信託)と特定の投資家向けの私募ファンドに分類される。また、REITのうち、証券取引所に上場しているものがJ-REITである。

 不動産証券化ビジネスの進展と投資家ニーズの拡大を背景に、J-REITを含めた不動産投資ファンド市場は着実な成長を遂げ、その勃興期から参画してきた同社の業績を後押ししてきた。

 同社は、2015年12月期より事業領域に基づく事業セグメントに変更を行った。新たな事業セグメントは、不動産投資ファンドの組成・運用を行う「アセットマネジメント事業(旧セグメントとほぼ同一)」を中核として、不動産管理など手数料収入による「不動産関連事業」、自己勘定にて不動産投資を行う「不動産投資事業(旧セグメントの不動産投資事業と不動産賃貸事業を含む)」の3つの領域に分類される。同社は、自ら不動産を保有せず(ノンアセット)、アセットマネジメント事業と不動産関連事業を安定収益基盤と位置付けている。

 各事業セグメントの概要は以下のとおりである。