【写真特集】シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相

シンガポールの「建国の父」と呼ばれた故リー・クアンユー元首相〔AFPBB News

 シンガポールの建国の父、リー・クアンユー氏の死去は、彼が後世に残したものについて、そして恐らくもっと重要なことに、そのレガシーが正しく理解されているかどうかについて熟慮する機会を与えてくれる。

 首相を務めた31年間で、リー氏は独裁主義と民主主義、そして国家資本主義と自由市場との複雑なバランスを取るユニークな統治機構を築き上げた。

 シンガポールモデルとして知られるリー氏独特の統治は、間違って、自由主義経済の上に敷かれた一党独裁体制として位置づけられることが多い。

 シンガポールを豊かな都市国家に変身させたリー氏の成功は頻繁に、自分たちの厳しい社会統制を正当化するものとして権威主義的な支配者によって引き合いに出される。その最たる例が中国だ。

 実際、中国の習近平国家主席はシンガポールモデルに強く感化された改革政策を追求している。容赦ない腐敗撲滅運動、反対派の大規模弾圧、市場志向の経済改革といったものだ。

誤解されたシンガポールモデル

 中国共産党はシンガポールに中国の将来像を見て取っている。すなわち、豊かな資本主義社会において永久に政治権力を独占する姿だ。

 しかし、中国の統治者たちが理解しているようなシンガポールモデルは1度も存在しなかった。リー氏の統治モデル――風刺漫画にされるような類ではなく、真のシンガポールモデル――を真似るためには、中国共産党が絶対に容認しないような民主的な制度を認める必要がある。

 リー氏の政治的才覚の本当の秘訣は、メディアや政敵の提訴といった抑圧的な行為を巧みに利用したことではない。そのような戦術は半独裁体制ではよくある取るに足りないことだ。リー氏が行った本当に革新的なことは、シンガポールを支配するエリート層の略奪的な欲を抑えるために民主的な機構と法の支配を使ったことだ。