シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相の国葬

〔リー・クアンユー元首相の国葬で、ひつぎの前に花を供えるリー・シェンロン首相AFPBB News

 3月29日、シンガポールでリー・クアンユー元首相の国葬が厳かに営まれた。シンガポールが生んだこの偉大な経営指導者・戦略家を筆者は心から尊敬している。リー元首相の指導者としての偉大さは、失礼ながら、昨今の大塚家具の父娘騒動を思い起こすまでもなく、誰もが認めるところだろう。

 それでも、先週の英語コラムで筆者は、「シンガポールにとって、グッドニュースはリー氏が初代首相であったこと、バッドニュースは彼がシンガポールの唯一の「建国の父」であったことだろう」と書いた。今回は筆者がそう考える理由について詳しく書いてみたい。

シンガポールの巨星

 シンガポールが中国共産党の模範とする統治モデルであることは既に何度か書いた(「中国の先生、シンガポールの政治が怪しい」、「もし中国がシンガポールになれたら」、 「中国の進む道は、台湾かシンガポールか」)ので、ここでは繰り返さない。

 現在筆者の最大関心事は、リー・クアンユーというカリスマ経営者を失ったシンガポールがこれから一体どこへ行くか、である。

 筆者はシンガポールが大好きだ。10年前外務省を退職して小さな家業を継いだ当時、最大のクライアントの1つがシンガポール企業だったからでもある。

 過去10年間で何十回訪れたことだろう。シンガポールは小さいが、小綺麗で、しかも国内の諸システムがしっかりしている。しっかりし過ぎているからか、あまり大儲けはできないのだが、それでも筆者にとっては数少ない海外の大切なお客様だった。