「サウジアラビアが国内の安全を脅かされる懸念から、イスラム過激派組織『イスラム国』へのスパイ潜入を試みている」
2015年2月4日付の英紙「タイムズ」は、ISIL(いわゆるイスラム国)の情報収集の必要性を痛感したサウジアラビア政府がISIL内部へのスパイ潜入を試みていることを報じた。1月にISILがサウジアラビア北部のイラク国境地帯を襲撃し、サウジアラビア軍兵士3人を殺害した事件が発端だという。
2014年9月、ISILがイラク南部を実質的に掌握したため、サウジアラビア政府はこれまでに国境警備隊を3万人増員するとともに、北側の国境に全長1450キロメートルに及ぶ「壁」を設置する工事に着手した。「壁」とは、国境に5重のフェンスを配備し、暗視カメラ等を駆使して付近で何かが動くとその情報が光ファイバーで瞬時に司令所と内務省に伝わるというハイテクシステムである。
しかし、それでもサウジアラビアは襲撃に遭った。そのことにショックを受けた内務省幹部たちは、スパイをISILに潜入させて情報収集を開始したというわけだ。
だが、その潜入は難航しているようである。内務省関係者が挙げる理由は「ISIL指導層の思考パターンが世俗とかけ離れている」というものだ。約2500人の国民がISILに参加しているサウジアラビア政府にとって、「ISILが次にどのような行動に出るのか予測できない」ことは悩みの種である。