マット安川 メディアの政権批判自粛を危惧した識者の声明について、ご自身も参加した小林節さんにお聞きしました。また、憲法改正の動きや、いわゆる「朝日新聞捏造記者問題」についてもお伺いしました。

メディアの露骨な安倍批判は総理本人が招いている

小林 節(こばやし・せつ)氏
憲法学者、慶應義塾大学名誉教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。著書に『「憲法」改正と改悪』など(撮影:前田せいめい、以下同)

小林 安倍内閣になって、メディアに官邸筋から公平な報道をしろという連絡が来るとよく聞きます。それを境に論調が変わったりする。恐ろしいことです。

 権力者というものは必ず堕落します。だからこそ報道の自由が大事なのであり、メディアは野党寄りでいいんです。政府はいやなことを言われたら、それは誤解だ、なぜならかくかくしかじかと言い返せばいい。それをせずに黙れというのはおかしいでしょう。

 メディアが萎縮したら国民は限られた情報で判断せざるをえず、となると正しい政治決断をできなくなります。人質事件をめぐって安倍(晋三、首相)さんの発言を批判したら「敵を利することになる」だの、非国民と言わんばかりの声が聞こえてくることも含めて、自由にものを言えない空気の広がりを感じます。

 メディアの安倍さんをめぐる報道にどこか人格批判に近いところがあるのはたしかです。しかしそれはご本人が自ら招いている部分もあると思います。国会答弁を見ていてぎょっとするんですが、彼は質問に答えずに自分の言いたいことだけを言うんですね。あれはよくない。批判にまっすぐ応えないのは一国の宰相としてアウトです。

 総選挙のときには争点にしなかったくせして、圧倒的多数の議席を取って政権に戻ったら、ご信任をいただいた集団的自衛権・・・ですからね。きわめて初歩的な部分で人を食ったようなことを言うところが安倍さんにはある。

 そういう態度に日々接しているメディアが、話して分からないならとばかりキツい表現を使っているのが実際のところでしょう。