日本の政府開発援助(ODA)が他国の軍隊を支援できるようになる。このODAの新政策に朝日新聞が難色を示した。だが、軍と名のつく存在を徹底的に忌避する朝日新聞の主張は、日本の国益という概念を軽視していると言わざるを得ない。過去の日本のODAが中国によってさんざん軍事転用されてきた現実さえも見ていない。

 日本政府が、既存のODA大綱に代わる新たな「開発協力大綱」を決定することとなった(参考:「政府開発援助(ODA)大綱の見直しについて」外務省)。この「ODA新大綱」はこれまで禁じてきた他国の軍隊への支援を災害救助など非軍事分野に限って認め、日本の「国益の確保に貢献」することを初めて明記する。

 日本政府はこの“解禁”により、中国の軍事的脅威に悩むベトナム、フィリピン、あるいはミャンマーなどの軍への巡視艇供与や、軍人の日本留学受け入れを計画しているという。日本の集団的自衛権の行使容認で、周辺の海上輸送路がさらに重要となるインドネシア、シンガポールなどへの安全保障がらみの援助強化も伝えられる。

ODA供与で自国の国益を求めてはいけないのか

 安倍政権が推進するこうしたODA新政策に対して、朝日新聞(2015年1月9日付)は「他国軍支援解禁」を批判する記事を掲載した。「ODA軍事転用の恐れ」という見出しを付け、日本の援助がたとえどのような国でも軍に提供されたり、軍事に転用されることは好ましくないという主張を展開した。「日本が送った船が紛争に使われたり、支援によって整備した空港や道路を軍が利用したりするケース」が想定されるという。