2015年は、日本が諸外国へ向けて歴史や領土に関しての明確なメッセージを発信すべき年である。日本がこれまでのように対外的に沈黙していたのでは、汚辱の傷を深め、領土さえも失いかねない。安倍晋三首相にとっても、長期政権の見通しが強くなったいまこそ、この対外発信を真正面に前進させる必要性が高まり、その土壌も固まってきたと言えよう。

 だが、その先兵となるべき外務省の姿勢がどうにも不可解なのである。日本国がいま最も必要とする発信を避けて、日本食やアニメという緊急性の低い無難なテーマへと逃げこもうとしているようなのだ。

日本にとって今こそ反論の好機

 日本が不当な糾弾を受けてきた慰安婦問題では、2014年に大きな転回があった。「日本軍が組織的に20万人女性を強制連行して性奴隷化した」という虚構を、その発信源の朝日新聞が2014年8月に虚構として認めたのである。日本政府が任命した調査委員会も同年6月に、日本軍の組織的な強制連行などはなかったことを確認する調査報告書を発表している。米国側の政府各省庁作業班(IWG)の報告でも、慰安婦に関する強制性や犯罪性を示す公的資料は皆無だったことが明示された。

 日本側としては、反論の好機がかつてない形で出現したのである。慰安婦問題はこのまま放置しておけば、米国や中韓両国による「日本軍が組織的に女性を強制連行した」という捏造の糾弾がそのまま定着してしまう。この糾弾は事実に反している。だから次世代の日本国や日本国民にとって受け入れ難い汚辱となる。日本にとっては歴史的な冤罪であり、濡れ衣なのである。

 慰安婦問題だけではない。一連の戦争犯罪裁判ですでに決着がつけられた日本軍の戦時中の行動への不当な非難も、今頃になって高まってきている。中国政府は2015年が第2次大戦終結70周年であることを利用して、日本の戦争行動を糾弾する一大国際宣伝を展開する構えを見せている。「中国は米英両国や旧ソ連と連帯して軍国主義の日本を打倒したが、日本はいまだ反省していない」というプロパガンダである。日本をドイツのファシズムと合体させて「中国はファッショ日本と戦い、破った」と喧伝しようというのだ。