本稿では、現代ロシアを読み解くカギとなる油価とウラジーミル・プーチン大統領の大統領年次教書に言及したいと思います。

 油価下落と正比例してロシアの通貨ルーブルが急落していますので、まず油価とロシア経済、および国家予算案の関係を考察してみたいと思います。大統領年次教書に関しては、今回は要点訳出のみにとどめ、追って詳細な分析に入りたいと思います。

 筆者は2012年7月に、下記の通りご報告致しました。

油価で読み解くプーチン・ロシア

2014年、ルールブックを破ったロシアのプーチン大統領

ウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News

 では、今後のプーチン政権の行方を占ってみたいと思います。直近の1~2週間では、米WTI(西テキサス原油)先物油価は1バレル85ドル前後、北海ブレント先物油価は100ドル前後で推移しており、7月13日のWTIは87.10ドル、ブレントは102.40ドルにて取引終了しました。

 ロシアの2012年度期首予算案は1バレル100ドル前提、期中で115ドルに上昇修正。100ドル以上の国庫収入は全額、露準備基金に繰り入れる予定ですが、100ドルを割ると、予算執行に支障をきたします。

 今年3月5日付米ウォールストリート・ジャーナル紙は、プーチ大統領が大統領選における選挙公約をすべて実行するためには、油価バレル150ドル必要と報じています。実際問題として、プーチン大統領自身、「油価バレル100ドル以下になれば、予算見直しが必要」と発言しております。

 では、来年2013年度の露予算原案の想定油価はいくらでしょうか?

 露財務省原案の油価想定はなんと、1バレル82ドルです。これでは、プーチン大統領の公約実現は画餅に帰すこと間違いありませんね(中略)。

 油価がバレル100ドル以上を維持する限り、プーチン大統領のエネルギー政策はある程度、実現可能でしょう。しかし、100ドル以下の趨勢ともなれば、すべては画餅に帰すでしょう。

 上記より、プーチン政権の行方は今後の油価次第となります。