激化するカスピ海周辺天然ガス争奪戦

南エネルギー回廊構築構想は成立するか?

2015.03.12(木) 杉浦 敏広
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カスピ海周辺地域の天然ガス争奪戦が激化しています。ウクライナ紛争を巡り、対ロシア経済制裁措置を強化している欧州連合 (EU) は、ロシアへの天然資源依存度を軽減すべく、ロシアを迂回してカスピ海周辺地域の天然ガスを欧州に輸送する構想を進めています。これが「南エネルギー回廊」構築構想ですが、最近ではより直截的に「南ガス回廊」構築構想と称されるようになりました。

【図解】ロシアの西欧向けガスパイプライン

ウクライナを経由するロシアのガスパイプライン〔AFPBB News

 一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2014年12月1日に訪問先のトルコで、ロシアの天然ガスを黒海横断海底パイプライン(P/L)でブルガリア経由欧州に輸出する「サウス・ストリーム」建設構想中止を発表、天然ガスの向け先をトルコに変更しました。

 この突然の変更に驚いたのが、天然ガスP/L揚げ地候補のブルガリアです。それまでは欧州連合(EU)の圧力により同構想に反対してきましたが、発表直後、手のひらを返したように、ブルガリアを揚げ地とするP/L建設構想再考をロシア側に依頼しました。

 本稿では、過去に報告してきたことをアップデートしながら、ロシアの政治経済・エネルギー事情とカスピ海周辺地域の天然ガスを巡る争奪戦の現況を概観したいと思います。

実現可能なパイプライン建設構想とは何か?

 従来は業界紙や専門誌が業界向けに報じてきたP/L関連記事が、最近では一般紙にも頻繁に登場するようになりました。鉄鋼業界や石油・ガス業界以外の方でも、今では「ナブコ・パイプライン」、「ノルトストリーム」、「サウスストリーム」、「ブルーストリーム」などの名前が結構馴染み深いものになってきたのではないでしょうか。

 世界の新規パイプライン建設構想が広く世に知れわたることは、業界人としては大歓迎です。しかしP/L建設構想を論じる上で、中には奇想天外と申しましょうか、経済性を全く無視した論議も多々ありますので、新規P/L建設構想が成立する3要件をここでまず確認しておきたく思います。もちろん、民間企業が事業主体となってP/L建設構想を検討する前提です。

 新規P/L建設構想が成立する3要件は下記の通りです。

(1)流す資源(油・ガス・水・その他)が存在すること(供給源)
(2)購入する顧客が存在すること(需要家)
(3)P/L建設費が回収できること(経済性)

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Toshihiro Sugiura (公財)環日本海経済研究所共同研究員

1973年3月 大阪外国語大学ドイツ語学科卒

1973年4月 伊藤忠商事入社。 輸出鉄鋼部輸出鋼管課配属。ソ連邦向け大径鋼管輸出業務担当。 海外ロシア語研修受講後、モスクワ・サハリン・バクー駐在。 ソデコ(サハリン石油ガス開発)出向、サハリン事務所計7年間勤務。伊藤忠商事/アゼルバイジャン共和国バクー事務所6年8カ月勤務。

2011年4月 バクーより帰任。

2011年5月 (財)日本エネルギー経済研究所出向、研究主幹。2015年3月伊藤忠商事退職。現在、(公財)環日本海経済研究所共同研究員
 

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