ウクライナ問題に決着つけるエネルギー価格

あまりに脆いバランスを不用意に壊した米国の責任は重大

2014.05.23(金) W.C.
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昨年の11月から始まったウクライナの騒乱は、それから半年を過ぎた今でも、その終着駅がどこなのか相変わらず不明のままだ。関係国間の外交交渉は空転し、国内での武力衝突による犠牲者の数はすでに3桁を超えてしまっている。

 3月18日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領がクリミアの併合を宣言してから、状況は新たな段階に向かった。西側諸国、中でも米国は、この併合を国際法無視の暴挙として糾弾し、G7の欧州や日本も巻き込んで対露経済制裁を始める。そして、騒乱の舞台はウクライナ東部へと移る。

 キエフの暫定政権に反対する勢力をクリミア併合が鼓舞したのか、4月に入って東部のドネツク、ルガンスクの両州では政権と袂を分かつ動きが加速され、分離主義者あるいはテロリストと呼ばれる面々が、10を超える都市や町の官公庁庁舎を占拠していった。

キエフ入りしていたCIA長官

ウクライナ危機で1万人が国内避難民に、国連発表

5月にクリミアで行われたタタール人追放から70周年の式典〔AFPBB News

 何とかこの動きを抑えようと、暫定政権のアルセニー・ヤツェニュク首相が4月11日に東部に乗り込み、幾つかの和解策を提示した。しかし、その直後の13日にアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は、武力による「分離主義者」の排除を宣言する。

 この宣言がなされた13日に米CIA長官がキエフ入りしていたことが後になって判明し、ロシアのメディアは「CIAがトゥルチノフに強硬策を指示した」と書き立てる。CIAが絡んだ話なのか、真偽の程は定かではない。だが、暫定政権内での連携プレーに難がある、という印象を外に向かって与えてしまったことは確かなようだ。

 ヤツェニュク首相は、下手をすればアレクサンドル・ケレンスキー(1917年の2月革命でロシア政府の首班になったが、その後の10月革命でボリシェヴィキに倒される)の二の舞いになるのかもしれない。

 だが、軍まで投入したトゥルチノフ大統領代行の「テロリスト」征伐も、思うようには成果を挙げられない。そして、この武力行使に猛反対するロシアは、国境付近でロシア軍を動員する動きを見せて暫定政権に対する牽制を図る一方、国連安保理事会の緊急会議開催を要求して西側への談判に及ぶ。

 欧米とロシアとの間で互いへの非難が飛び交う最中(さなか)の4月17日に、米・露・EU・ウクライナの4外相がジュネーブに集まり、ウクライナ国内の「すべての違法武装集団の武装解除」などで合意の体裁を何とか整えたように見えた。しかしその直後から、何が「違法武装集団」なのかの解釈で、関係国の同床異夢と肝心な点で話が何も纏まっていなかったことが明らかになる。

 東部の反乱集団のみならず、1~2月に西部で治安組織の武器庫を襲撃して多数の武器を奪い、いまだにキエフで広場や建物を占拠している右派・民族派も「違法武装集団」に含まれて当然、と主張するロシアと、マイダン革命は平和的かつ合法的抗議行動であり、民族主義者はすでに政府の一員ゆえに不法武器所有には当たらない(だから、「違法武装集団」とは、東部で庁舎を不法占拠している「分離主義者」のみ)、という米国は互いに譲らない。

 プーチン大統領は5月9日の対独戦勝記念日にクリミアを訪れ、同地が揺るぎなきロシアの領土となったことを内外に誇示した。その3日後には、彼の延期要請をも拒否してドネツク州とルガンスク州とで反政府派主導の住民投票が行われ、いずれもキエフに対してノーを突きつけた(投票率75%、自治・独立に賛成90%前後)、と「分離主義者」たちは宣言する。

 この住民投票が法的根拠を欠くもので、過半数がロシアへの併合を望んでいるといった即断などは論外、とはその通りだろう。だが、それが現在の暫定政権に対する両州での信任投票でもあったと解するなら、それなりの意味合いは否定できない。

 こうした動きへの鎮圧に回らねばならない警官や軍の一部が機能しないのも、腐敗という宿痾に加えて、彼らが自分たちを指揮している今の政権自体に信頼を置いていないからだろう。

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大手商社でロシアを長年担当する。

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ロシアは日本の隣国にもかかわらず最も遠い国の1つでもあった。しかし両国間の経済関係が密接になる中で、ロシアを正しく知ることは不可避である。このコラムでは日本を代表するロシアの専門家が様々な角度からロシアと周辺国を鋭く斬る。

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