エネルギー問題に戦場を移した欧米・ロシアの対立

強硬姿勢を崩さないウクライナ、裏で米国が糸を引く?

2014.07.03(木) W.C.
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ウクライナ問題に端を発した欧米とロシアの対立は、そう簡単に解れ(ほぐれ)そうにもない。その望ましからぬ雰囲気の中の6月24日に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はオーストリアを訪問した。3月のクリミアの併合以来、欧州の国が単独で彼を迎え入れたのは初めてである。

 欧州とロシアの関係修復にオーストリアが乗り出した、あるいは他の欧州の有力国がそれをオーストリアに託した、などいろいろ説が出る。

オーストリアとロシアの意表を突いた合意

 だが、このプーチン大統領の訪問で最も注目されたのは、オーストリアの石油・ガス企業のOMVとロシアのガスプロムとが、サウスストリーム(South Stream)の建設に関する合意文書に調印したことだろう。これでオーストリアが、自国の加盟するEUの方針に、事実上弓を引く結果になったからだ。

 サウスストリームとは、ロシアから黒海の海底を900キロ以上も這ってブルガリアに上陸し、セルビア、ハンガリー、スロヴェニアを経た後に、最後はイタリアへ向かう総延長2400キロ近くの長大なガスパイプライン建設計画である。

 この計画はガスプロムがイタリアの半国営メジャーであるEni(炭化水素公社)と組むことで2006年に始められ、その後ドイツやフランスの企業も出資に加わった。黒海海底部分やパイプラインが通過する国での建設工事が、その諸準備も含めて既に始められている。

 元々は、ロシアからトルコへ向かう海底ガスパイプライン(ブルーストリーム)を増強し、トルコ経由で欧州へガスを輸送する案だったが、ロシアとトルコとの間の話がまとまらなかったために、黒海の海底を一気に横断して欧州にロシアから直接ガスを運ぶという形になった。

 この意表を突く案が公表された時には、鉄腕宰相で鳴らすトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相ですら腰を抜かさんばかりに驚いたとか伝えられる。

 計画が発表された2006年と言えば、その年の初めに価格問題のこじれからロシアがウクライナへのガス供給を止めた事件が発生している。サウスストリーム建設計画は、問題ばかり引き起こすウクライナ経由での欧州向けガス輸送に不安を持ったロシアが、ウクライナを迂回する欧州向けのパイプライン経路を模索した結果でもあったのだろう。

 だが、この計画推進にEUが立ち塞がった。EUが進める域内のガス市場自由化政策に、この計画が適合しないからである。

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大手商社でロシアを長年担当する。

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