先週の12月10日から特定秘密保護法が施行されたのを受けて、防衛省はおよそ4万5000件の情報を指定対象にしたと報道されている。
これまで、日本には「反逆罪」の規定や「スパイ防止法」に類する独立した法律が欠落していることや機密情報漏洩への対処の緩さなどから、米軍関係者たちは、機密度の高い軍事情報を日米間でやり取りすることに危惧の念を抱いていた。この法律が施行されたことによって、彼らも少しは安堵しているようである。
ただし、軍事関連情報だからといって「なんでもかんでも『秘』指定にしてしまうことは決して好ましい傾向とは言えない」との危惧の念を口にしている人々も少なくない。
日米の実務現場で発生している機密指定の齟齬
特定秘密保護法が成立する以前も、米軍機関で防衛省・自衛隊と直接やり取りをしている部局では、日本側が「何でもかんでも『秘』指定にしてしまう」ことに当惑したとの話を幾度か聞いたことがある。すなわち、米軍内では“Official Use Only”程度の情報や場合によっては公開指定がなされた情報を会議やセミナーなどで日本側に手渡したところ、日本側ではアメリカ側での取り扱いよりも高度な何らかの機密指定を付してしまう場合がしばしば生じたという。
例えば、米軍では何ら「秘」扱いではなく公開情報である文書や図版を日本側が入手して、それらを「秘」指定してしまった場合、アメリカと日本で同一の情報が異なった取り扱いがなされることになってしまう。日本との整合性をとるためにアメリカ側においても再度「秘」指定にすることは、すでに公開情報になってしまっているため、もちろん不可能である。したがって、同盟国が「秘」指定をした情報をどう取り扱えばよいのか、戸惑いを隠せない現場の将校が少なくなかった。