「日本の農産物は高品質だから海外で高く売れる。もっと輸出しよう」という主張をよく聞きます。コメの場合、こうした主張にあまり根拠がないということは以前書きました(「外国の富裕層は日本の高いコメなんて買いません」)。では、他の農作物もそうかと言えば、違う様相を示します。これが農業政策立案の難しさです。

 例えば、筆者が今年の兵庫県和牛共進会(兵庫県産和牛のコンテスト)に行ったところ、牛を買い付けるセリの参加業者にアジアやヨーロッパの会社が来ていて、何頭か競り落としていったのには驚きました。

 すでに屠殺してある枝肉が並ぶ食肉市場で外国人バイヤーをちらほら見かけるのは、3年くらい前からありました。けれども、屠殺してみないと良いか悪いか分からない、買うのにノウハウが必要な生体の競り市まで参加してくるとは思わなかったので驚いたのです。JAも含む多くの食肉業者が外国にセールスをかけてきた成果が出てきていると見ていいでしょう。

 しかし、こうした例はまだ少数です。農産物の場合、各国の防疫規制をクリアしないと輸出できないことが多いからです。

 下手に外国産農作物を入れると、一緒に付いてきた害虫や病気によって自国農産物が危機にさらされるかもしれません。その危険性を嫌がらない国はありませんから、これは致し方ありません。しかし、輸出したい国から見ると、障壁になるのは間違いありません。