よく言われることに、「日本はコメをどんどん輸出すればいい」とする主張があります。日本のコメは高品質だから高くても中国などの富裕層が買うに違いないというわけです。

 そうした主張の根拠になっているのは、何年か前に報道された、中国で日本のコメが輸出された時に法外な高値で売れたというニュースでしょう。

 しかし、現在、日本のコメが中国から求められていると言えるでしょうか?

コメの平均輸出単価は年々下落

 最近、中国では日本製紙おむつの需要が急増し、花王の「メリーズ」が日本でも買い占められて中国に転売されたりしているようです。以前から日本の紙おむつや粉ミルクが中国で求められ、密輸する者まで現れていることはよく知られています。しかし、同じことが日本のコメでも起きているとは聞いたことがありません。

 日本から中国にコメを輸出するには、まず精米工場が「指定工場」と認められる必要があります。1年以上かけてカツオブシムシという害虫が工場にいないことを確認して、指定工場になることができます。そして、やはり中国から防疫水準を認められた倉庫で薫蒸処理し、日本の植物防疫官と中国の検査官のチェックを受けて認可を受けるといった過程を踏まなければなりません。薫蒸処理とは、要は害虫を駆逐するポストハーベスト農薬を散布するということですから、事実上無農薬のコメは輸出できません。

 そうした面倒な手続きを経て輸出されるコメの平均単価は年々下落しています。年間100トンもない微々たる量しか輸出されていないのにもかかわらず、です。今では国内で売る価格とほとんど変わらないのではないでしょうか。

中国へ輸出されたコメの総量と価格
(財務省統計を加工して作成)