すでに安倍首相は解散を決意している

 衆議院の解散・総選挙がすでに既定の事実のようになっている。自民党の二階俊博総務会長は、「解散の風が吹き始めることは間違いない。万全の態勢を整えていく」と語った。公明党の山口代表も「早ければ年内にというシナリオがあるから、対応できるような構えを取っていきたい」と語り、支持母体である創価学会とともに、12月14日投開票ということで準備に入るよう、地方組織に指示したと報じられている。

 正式には、11月17日に安倍首相が帰国してから判断するということだが、安倍首相の意向なしに、解散風が吹くことなどあり得ない。共同通信の11月12日配信によれば、安倍首相は、すでに自民党、公明党幹部にその意向を伝えているという。

解散はいつでも党略解散

 なぜいま解散なのか。いろいろなことが指摘されている。

 1つ目は、消費税再増税の是非を国民に問うというもの。消費税再増税の判断材料となる7~9月期のGDP(国内総生産)の速報値が17日に発表されるが、相当悪い数字になることが確実なため、再増税の先送りを決断する意向だが、その是非について国民の判断を仰ぐ。あわせてアベノミクスについても、審判を仰ぐ。

 2つ目は、小渕優子前経済産業など女性2閣僚の辞任を引き金に、閣僚の政治とカネを巡るスキャンダル追及で国会審議が停滞し、行き詰まり感が漂うなかで、安倍内閣の支持率が高いうちに解散を断行して局面を打開し、陣容を一新するというもの。毎日新聞(11月12日付)は、「官邸関係者によれば『小渕氏辞任の頃にはすでに首相の考えは固まっていたようだ』と語る」と報じている。

 3つ目は、来年の統一地方選後には、国民の間でも大きな意見の相違があり、安倍内閣への厳しい見方も強まっている集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の審議や原発再稼働問題などが控えている。この後に解散することは困難であるというもの。

 4つ目は、民主党をはじめとする野党が候補者選定も含め、選挙態勢が全く整っていないため、抜き打ち的に解散するというもの。

 かつて長期政権を誇った佐藤栄作首相は、「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散するほど上がる」と語ったそうだ。衆議院の解散は、首相の専権事項である。したがって内閣不信任決議が可決された場合を除き、首相がもっともやりたいタイミングを選んで衆議院を解散するのは至極当然のことである。