先日、「さんまのホンマでっか!?TV」を見ていたら、心理学者の女性が「あなたは自分はウソが上手いと思いますか?」という質問をゲストたちに向けていた。4人のゲストのうち、3人が「いいえ」と答えて、「はい」と答えたのは1人だけだった。

 テレビを見ていた私は、「そりゃあ、『いいえ』に決まってるだろう。相手が本当にウソに引っかかっているかどうかなんて分からないからなあ」と呟いた。

 「『はい』と答えた方は、うぬぼれが強くて自己中心的。だまされやすく、詐欺に引っかかる可能性があります」

 女性心理学者はそう言ったあとに、私が思いついた理由とほぼ同じ説明をした。

 「ほうら、みろ」と得意になりながらも、私は今ひとつ釈然としなかった。ウソが上手いかどうかにかかわらず、ウソをついてでも乗り切らなければならない状況に追い込まれることはあるからだ。そんな時は、「おれはウソが下手だから」などと自嘲していても埒(らち)が開かないのであって、ウソをつこうと、はったりをかまそうと、状況の打開に繋がりそうな手段は何でも試してみるに限る。「ウソから出た実(まこと)」「ひょうたんから駒」で、苦し紛れについたウソが思いがけない道を切り開くことだってあるからだ。

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 元大洋ホエールズの平松政次投手がバッティング投手をしていた時に、先輩からボールに威力がないのを腐された。頭に来た平松は、これまでほとんど投げたことのないシュートを思いきり投げ込んでみたところ、ボールが自分でも驚くほどの鋭い変化をした。打席に入っていた先輩も目を見張り、それがきっかけになって平松投手は入団3年目にして一軍の試合に登板するチャンスを掴んだ。その後は、「カミソリシュート」を武器に球界を代表する投手として活躍したのだから、世の中何が幸いするか分からない。