マット安川 憲法改正や北朝鮮問題など、日本の外交・国防問題ひいてはこの国の将来を語るときの安倍晋三さんはとにかく熱かったです。
今までの政治活動ならびに総理経験と実績に裏づけされた確たる発言の一つ一つに、議員としての責任感と日本人としての誇りを持つ政治家なのだと、思わず感じ入りました。
民主党は「消費税」で負けたのではない
元内閣総理大臣、衆議院議員。自由民主党幹事長、内閣官房長官(第3次小泉改造内閣)を経て2006年に第90代内閣総理大臣に就任、翌2007年辞任。(撮影・前田せいめい)
安倍 参院選で民主党が敗北したのは消費税増税を打ち出したからだと言われますが、それは間違いです。
最初に消費税10%という具体的な数字を示したのは、われわれ自民党でした。高齢化が進む中、年金、医療、介護といった社会保障費は1兆円近くまで膨れ上がっています。しかし大事なセーフティネットですから、給付もサービスの質も下げるわけにはいきません。
もちろん今後も新成長戦略により経済成長を追求しますが、高度成長期のように大幅に税収を伸ばすのは困難です。社会保障の水準を維持するには国民の皆さんにご負担をお願いせざるを得ないという判断から、私たちはあえて消費税10%という数字を提示しました。
民主党はこれに相乗りしたわけですが、彼らの場合、どう見てもばらまきのつけ回しです。
それにも増して大きな失点は、菅(直人)総理の発言のブレでしょう。最初は公約であるかのような言い方をしながら、間もなくまだ決めたわけではないとトーンダウンしました。
低所得者への減免措置については、当初の年収200万円以下が250万円、300万円と増えて、しまいには400万円になる始末。これではサラリーマンのほぼ6割が消費税を払わないことになります。
ある人の計算によれば、消費税率を10%に上げてもかえって税収が減ってしまうとか。言うことがコロコロと変わるばかりか、裏付けのない数字を平気で出すいい加減さを国民にさらしたこと。参院選の厳しい結果の要因はそこにあると思います。
失業率を抑えられたのは自民政権の財政出動の結果
民主党は、830兆円の借金を作ったのは自民党政権の失政だと攻撃します。自民党がきちんと反論しないので私はここであえて言いたいのですが、現在の財政状態は失業率を抑えるための、やむにやまれぬ財政出動の結果なのです。
国の借金が積み上がったのは主にバブル崩壊後のことです。失われた10年と言われた時期、最優先課題は銀行が担う金融機能を守ることでした。