「この3年半、国際社会は何もしてくれなかった。今回の空爆はイスラム国だけに対するものだが、それよりもアサド政権を倒すために、もっと僕らを支援してほしい」

 シリアの首都ダマスカス北東郊外の町・アルビンの反政府活動家であるハイサムは、そう語る。

 アルビンは現在も、もっぱらアサド政権軍の猛攻を受け続けている町だ。そこで苦しい戦いの日々を送っている彼らは、極端な過激派組織であるイスラム国への警戒感は共有しているものの、それよりも目下の問題は、市街地への無差別な砲爆撃に加え、猛毒の塩素ガスまで使用して住民の虐殺を続けているアサド政権である。

 9月23日、米軍はアラブ5カ国とともにシリア空爆に踏み切ったが、いよいよアメリカが軍事介入したことには、シリア国民の間には期待とともに、不安や不満もあるようだ。

 他にも何人かのシリア人に話を聞いたが、アメリカがアサド政権打倒を助けてくれないことへの不満の声と、それでもようやく外国が軍事介入に動いたことへの期待の声が、両方あった。反体制派関係者には、米軍の介入をなんとかアサド政権に向けさせたいと願う声もあれば、これまでのようにどうせ何も変わらないだろうと諦める声もあった。SNS上のシリアからの声には、空爆は結果的にアサド政権を助けているだけだという激しい批判も多くある。

 総じて言えば、北部のクルド人地域など、イスラム国の激しい攻撃を受けている地域を除けば、反体制派の主敵は今でもイスラム国よりアサド政権だ。ところが、今回のアメリカの軍事行動の目標は、あくまでイスラム国の壊滅であり、アサド政権を弱体化させるものではない。その点に対するいらだちの声は確かに多い。

 しかし、とにかく3年以上にもわたって日々殺され続けている人々にとっては、外国軍の介入こそが最後の希望でもある。なにせ人口2200万人の国で、すでに死者は19万人超。国内外への難民・避難民は人口の半分近い1000万人弱に上っているのである。このまま何も変わらなければ、犠牲者の数がますます増えるだけなのだ。

 今もイスラム国の脅威にさらされている人々は、むろん空爆への期待は大きい。9月18日からのイスラム国の侵攻を受け、トルコに逃れたクルド人たちには、各国際メディアの取材に対し、空爆への期待を口にする人が多く いる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、23日までの6日間だけで14万人もの人々が国境を越えたというが、それはイスラム国の戦闘員に捕まれば、殺害される恐れがあるからだ。

 こうした人々を救うためには、アメリカの軍事介入でイスラム国に打撃を与えるしかないのが現実である。しかし、批判の声ももちろんある。

 その理由は主に「(1)国際法違反ではないか?」「(2)軍事的手段ではなく、平和的手段で解決すべきではないか?」「(3)民間人の巻き添え被害が出るのではないか?」「(4)国民を殺害し続けているアサド政権を利するだけではないか?」「(5)空爆だけで成果が期待できるのか?」「(6)逆に海外でのテロが増えるのではないか?」といったことだ。