アメリカ海兵隊は、通常は空軍が運用している各種航空機も自前で保有している。海兵隊のKC-130J空中給油機とMV-22Bオスプレイ(写真:アメリカ海兵隊)

 沖縄県名護市議選挙で、アメリカ海兵隊普天間航空基地の辺野古への移設に反対する勢力が勝利した。それを受けて菅官房長官は、11月の沖縄県知事選挙で辺野古移設推進派の仲井真現知事が劣勢に立たないように、「普天間基地の運用を2019年2月までに停止させる」と明言した。

 このような安倍政権による辺野古移設の積極的な推進は、結果として在日アメリカ海兵隊の戦力を低下させ、その抑止効果を薄れさせることになる。つまり、実は極めて皮肉な政策であることを、我々は明確に認識しておかねばならない。

辺野古移設にはMAGTFの理解が必要

 そもそもアメリカ海兵隊は、アメリカや同盟国の緊急事態に対処するために「海軍艦艇で目的地沖に接近して、艦艇から空と海を経由して陸地に到達して作戦を展開する」という緊急展開能力と水陸両用能力を特徴とする軍事組織である。そのために海兵隊は独自の作戦組織構造である「MAGTF」(海兵空地任務部隊、「マグタフ」と発音する)を生み出した。

 MAGTFは、組織の規模によって海兵遠征軍、海兵遠征旅団、海兵遠征隊、特別MAGTFという分類がなされており、出動作戦ごとに組織の大きさと構成内容を自由自在かつ迅速に組み替えることができる。ただし、司令部部門、陸上戦闘部門、航空戦闘部門、補給戦闘部門の4種類の要素から構成されているという基本構造は常に変わらない。

 例えば、沖縄のキャンプ・コートニーに司令部がある「第3海兵遠征軍」も、沖縄のキャンプ・ハンセンに司令部がある「第31海兵遠征隊」も、ともにMAGTF部隊である。第3海兵遠征軍の最大兵力は2万名で、独自に2カ月間の戦闘を遂行できる大規模部隊である。それに対して、第31海兵遠征隊は最大兵力3000名で独自に2週間の戦闘に従事することができる小規模な部隊である。