8月18日から、製薬企業が医師らに支払った講師謝金・原稿執筆料などの個人別金額の情報公開が始まりました(「『企業活動と医療機関等の透明性ガイドライン』に基づく公開情報」)。

 ファイザー製薬が公開した情報では、2012年から1年間で6000名の医師に支払われた医学研究会の講演報酬などは10億円だったとのことです。

 ただし、10億円と書くと大きな金額のようですが、医師1人当たりに換算すると年間16万円、月1万3000円ほどです。

 そもそも、この金額公表の目的は、“臨床試験の公平性の担保”です。「製薬会社は研究に必要な資金援助しか行っていないし、医師や医療機関側もそれ以外は受けていない」という証明のために公開されるものです。

 医師個人ごとの金額公開が不要とまでは言いませんが、まず、プライバシーの観点から私は若干違和感を感じます。また、研究や講演を頑張った医師が「年間500万を受け取った」とわざわざ報道されるのは、公開制度の本来の趣旨を理解した報道とはとても思えないのです。

2011年以降、高級飲食の接待は廃止されている

 製薬会社の団体である日本製薬工業協会が「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を2011年に制定してから、医師が製薬会社の医薬情報担当者(MR)から高級飲食の接待を受けることは一切なくなりました。

 一部の医師は、接待がなくなって残念に思っているかもしれません。けれども私を含めた大部分の医師は、接待ではなく、しっかりとした医薬品の臨床データを求めています。そのデータを基に、今提案できるベストの薬を患者さんに処方したいと思っているのです。