政府もようやく気づき始めた資源大国ニッポン

日本には知恵も資源もある~セルロースナノファイバー

2014.08.20(水) 矢野 浩之
    http://goo.gl/iM0k8O
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6月22日から25日の4日間にわたって、カナダ西部の都市、バンクーバーで北米紙パルプ技術協会の主催による国際学会が開催された。テーマは、再生可能資源のためのナノテクノロジー。主役はセルロースナノクリスタル。セルロースナノファイバーは、北米、特にカナダでは主役の座にはない。

圧倒的な価格競争力を持つセルロースナノファイバー

 セルロースナノファイバーについては前稿で紹介した。木材からリグニンなどのマトリックス物質を除去した化学パルプを機械的に解繊して得る幅4〜20nm(ナノメートル)の軽量、高強度のナノ繊維である。

 これに対して、セルロースナノクリスタルは、化学パルプやコットンを60%濃度以上の硫酸や塩酸で処理して結晶部分だけを残したもの。幅は4〜10nm程度。形状は爪楊枝のような長さ/幅比で、強度的性質はセルロースナノファイバーと同程度と推測される(図1)。

図1 セルロースナノファイバー(左)とセルロースナノクリスタル(右)。倍率の違いに注意(立教大学、上谷博士提供)

 新しい素材のため、国際標準化に向けた検討の中で命名法に向けた議論が進んでいる最中であるが、最近は、セルロースナノファイバー(CNF)とセルロースナノクリスタル(CNC)を合わせてナノセルロースと呼ぶようになっている。

 CNCの研究開発は、大型製造テストプラントの建設と用途開発の両輪で60億円近い資金を投入しているカナダがリードしている。

 60%を超える高濃度の硫酸で処理し、中和し、洗浄して純度を上げるというプロセスを経るため、CNCはどうしてもコスト高になってしまう。このため、カナダの研究者は、それ以上のお金をかけない、水系で未修飾での使用を目指している。

 これに対して、筆者は、セルロースナノファイバーの最大のアドバンテージは、その集合体であるパルプが1kg50円で製造されるという圧倒的価格競争力であり、そのメリットを生かし化学修飾することで様々な樹脂や溶媒との組み合わせが可能になると考えている。

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矢野 浩之 Hiroyuki Yano

京都大学 生存圏研究所 生物機能材料分野 教授、農学博士

 

長野県松本市出身。1982年3月、京都大学農学部林産工学科を卒業。84年、同大学大学院農学研究科修士課程林産工学専攻を修了。

 

1989年に論文により農学博士を取得。86年から京都府立大学農学部助手、92年から同大学講師を務める。98年に京都大学木質科学研究所助教授に就任。2002年に秋田県立大学木材高度加工研究所客員助教授。2004年より京都大学生存圏研究所教授。主にバイオ系ナノ材料の研究・開発に力を注ぐ。2000年から植物の基本骨格物質となるセルロースナノファイバーを用いた材料開発を進める。

 

同素材は、鋼鉄の5倍以上の強度を誇る太さ4-20ナノメートルのバイオナノファイバーであり、IT機器や自動車、医療機器など幅広い分野で実用化に向けた研究・開発が進められている。

 

日本木材学会や日本材料学会、セルロース学会などに所属。ナノセルロースフォーラム会長。1989年に日本木材学会奨励賞、2005年にセルロース学会林治助賞、2009年に日本木材学会賞を受賞している。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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