政府もようやく気づき始めた資源大国ニッポン

日本には知恵も資源もある~セルロースナノファイバー

2014.08.20(水) 矢野 浩之
    http://goo.gl/iM0k8O
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 我々は、ナタデココ(バクテリアが作るセルロースナノファイバー)の食経験がある。あるいは、木材や紙の加工現場では、粉じんのなかにセルロースナノファイバーも含まれていると思われるが、作業者についてこれまでアスベストのような被害は聞かない。

 先行するカナダ、フィンランドでの研究でも人体への有害性は報告されていない、といった説明をしたが、グレーは黒である。

 今後、しっかりとした安全性評価を進めていかなければならない。その安全性を含む、国際標準化の議論について日本が大きく出遅れていることに対して、技術で勝っても戦略で負けることが交渉術のへたな日本ではよくあることなので、しっかりとやってほしいという意見もあった。

 話を聞いていると、今すぐにでも商品になりそうだが、実用化に向けた課題は何か、といった質問もあった。

これまでに培った産業力が新素材開発の優位性になる

 確かに、セルロースナノファイバーは何億年も前から地球上に存在している。一部、セルロースナノファイバーのサンプルワークや販売も始まった。しかし、産業資材とするには、まだまだ多くの高いハードルがある。それを思うと、麓にいて富士山の山頂を眺める心境である。

 ナノ材料としての一番難しい、高性能ナノ繊維を作るという部分はすでに植物がしてくれているとはいえ、そのポテンシャルを最終製品で発現させるためには、ナノファイバーの抽出、修飾、構造化、複合化において、まだまだ多くの技術開発が必要である。

 様々な分野の研究者が、新しい素材を世の中に送り出すという強い思いで連携し、研究を進めていかなければならない。また、それを促進する体制の構築が不可欠である。

 これまでは0から1を生み出す努力、セルロースナノファイバーのポテンシャルを示す努力がなされてきたが、これからは様々な専門性を幅広く集めて、1を100にする努力が必要である。

 幸い、我が国には製紙産業、化学産業、自動車産業、電子機器産業の分野で世界をリードする企業が連携しやすい地理的環境に集まっている。

 繊維産業やレーヨンを扱うセルロース産業は、かつての我が国の花形産業であり、多くの知恵が蓄積している。セルロースナノファイバーの大型産業資材化を目指す上で、我が国は世界で最も優位な状況にあると言える。

 そのアドバンテージを生かして、持続型資源に基づく産業、世界から尊敬される未来型産業を日本に興したい。日本には資源も知恵もある。

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矢野 浩之 Hiroyuki Yano

京都大学 生存圏研究所 生物機能材料分野 教授、農学博士

 

長野県松本市出身。1982年3月、京都大学農学部林産工学科を卒業。84年、同大学大学院農学研究科修士課程林産工学専攻を修了。

 

1989年に論文により農学博士を取得。86年から京都府立大学農学部助手、92年から同大学講師を務める。98年に京都大学木質科学研究所助教授に就任。2002年に秋田県立大学木材高度加工研究所客員助教授。2004年より京都大学生存圏研究所教授。主にバイオ系ナノ材料の研究・開発に力を注ぐ。2000年から植物の基本骨格物質となるセルロースナノファイバーを用いた材料開発を進める。

 

同素材は、鋼鉄の5倍以上の強度を誇る太さ4-20ナノメートルのバイオナノファイバーであり、IT機器や自動車、医療機器など幅広い分野で実用化に向けた研究・開発が進められている。

 

日本木材学会や日本材料学会、セルロース学会などに所属。ナノセルロースフォーラム会長。1989年に日本木材学会奨励賞、2005年にセルロース学会林治助賞、2009年に日本木材学会賞を受賞している。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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