2014年7月16日、韓国の新しい経済副首相兼企画財政部長官に崔炅煥(チェ・ギョンファン=1955年生)氏が就任した。朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領に近い有力国会議員が経済政策の指揮官になったことに期待が強い。就任早々、サムスン電子などが積み上げてきた「大企業の内部留保金」の活用を打ち出し、大きな議論を呼んでいる(2014年6月23日「韓国の新経済副首相はウォン高容認派?」参照)。

 「アベノミクスを圧倒する戦略を出せ」――。有力紙「毎日経済新聞」は、崔炅煥副首相の就任に合わせて、こんな題目の社説を掲載した。

韓国国内でアベノミクスへの評価が急上昇

 なんとも刺激的な題目だが、その内容を見ても「アベノミクスを凌駕する常識を超えた成長戦略を打ち出さなければならない。無気力に陥った経済主体に野生的な衝動を持たせ、成長軌道に再び乗せなければならない」と勇ましい内容だ。

 韓国メディアではこのところ、アベノミクスへの評価が一気に上昇している。「毎日経済新聞」などは相次いで日本経済の現状を肯定的に評価する大きな記事を経済している。

 安倍晋三首相が「アベノミクス」とともに再び政権の座に着いた時には、懐疑的な見方が多かったが、いまや様変わりしたようだ。

 その理由の1つが、内需の不振、ウォン高の進展による輸出採算性の悪化などでマクロ経済も企業業績もこのところ明るい材料に欠けていることがある。

 朴槿恵政権が誕生してから1年半近く経過するが、経済政策については目立った成果が上がっていないことも、「アベノミクス」への関心が高まっている理由だ。

 崔炅煥副首相が就任前に何度も「低成長、低物価、過度な経常収支の黒字という、日本の『失われた20年』の時に見られたような現象が韓国経済に出てきた」と述べたことから、「日本はどうやって克服しようとしているのか」という関心が再び高まっているという事情もある。

 就任前から「アベノミクスを圧倒せよ」という課題を突きつけられた経済副首相も大変だ。

企業の内部留保に新税導入か

 それだけ崔炅煥副首相に対する期待大きいということだが、本人もその点は十分に意識しているようで、就任前後に積極的に経済政策について発言して注目を集めている。

 その中で、産業界を震撼させたのが、7月16日の就任記者会見で出てきた発言だった。

 「企業は過度に社内留保金を溜め込んでいる。この社内留保金が、市場に流れるように誘導する制度を導入したい」