マット安川 軍事アナリスト小川和久さんが、集団的自衛権をめぐる議論について解説。日本の軍備の実態から中国軍部とのリアルなやりとりまで、時にメディアの報道と正反対の現状について、幅広く伺いました。

集団的自衛権の行使容認は評価。ただし政府の説明は不十分

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小川和久/前田せいめい撮影小川 和久(おがわ・かずひさ)氏
1945年熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立、現在は国際変動研究所理事長のほか、静岡県立大学特任教授。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

小川 今回の集団的自衛権の行使容認については、安倍内閣、特に安倍(晋三)首相がリーダーシップを発揮したということを高く評価します。戦略の要諦を踏まえて動いたということも、過去のリーダーにはない動きでした。

 どういうことかと言いますと、古代中国の戦略の書、孫子の兵法の中の有名な言葉の1つに、「巧遅は拙速に如かず」というのがあります。戦いにおいては、とにかく素早く目的を遂げて、雑な部分が残ったとしてもそれでいいんだと、どんなにきれいに仕上げてもタイミングを逸したものは何の価値もないという意味です。

 だからとにかく日本の安全を図るため、その枠組みを素早くつくる。枠組みがなく戦後69年間きてしまいましたから。当然、雑な部分は残るけれども、枠組みができれば安全な状態が生まれますから、その中で仕上げを丁寧にしていけばいい。それが本来の考え方です。

 ところが、日本人は奈良時代に孫子が入ってきたのに、「拙速」について誤解している。字面だけ見て、速いけれども雑だろうと。奈良時代から日本人はガラパゴスの議論をしているんです。その意味で、今回の安倍さんにはプラスの評価をします。

 ただ、政府の説明としては、国内的にも対外的にも不十分で、きちんと国民の腑に落ちる形で説明をする責任があります。その説明責任がいま問われているところです。

右も左も集団的自衛権という言葉をもてあそんでいるだけ

 集団的自衛権について、賛成か反対かというのは日本的な議論で話になりません。集団的自衛権という言葉を、右も左ももてあそんでいる。そんな議論をするのは日本人だけです。やはりガラパゴスの議論の中で、日本人相手に日本国内でしか通用しない話をまだしているという点は、これからできるだけ早く整理しなければダメです。