前回に続き、ワーキンググループの農協改革の目玉の1つ、JA全農(全国農業協同組合連合会、以下「全農」)の株式会社化について述べましょう。正直なところ、全農を株式会社にしてどんなメリットがあるのか、筆者には意味不明です。

 ワーキンググループの主張は、こうです。

 <農業者の利益増進に資する観点から、農産物の流通に関する我が国最大規模の組織である全農がガバナンスを高め、グローバル市場における競争に参加するため、全農を株式会社に転換し、バリューチェーンの中で大きな付加価値を獲得できる組織としての再構築を図る。・・・>

 ガバナンスとは、いわゆる企業統治のこと。バリューチェーンはマイケル・ポーターの言い出した企業経営のコツのことです。一見常識的なことが書いてあるように見えますが、やはり何が書いてあるのかよく分かりません。

 唯一分かっていることは、この提言をした人たちが「株式会社は、協同組合よりもいい」と考えているらしいということだけです。

実は株式会社の経営をよく知っている

 全農は、一種の総合商社で、2012年売上高は住友商事よりは小さいが、双日よりは大きい程度のポジションにあります。収益面では、黒字こそ出していますが、あまり成績は良くありません。だからと言って、株式会社にしたら収益は向上するでしょうか?

 おそらく、全く変わらないと思われます。なぜなら、全農は農業協同組合連合会という名が示すように、所有者は全国の単協(全国あちこちにある、地域の農協)です。株式会社に転換したところで出資金が株式に変わるだけのことです。ガバナンスに全く影響はないと考えるのが自然です。