このところ仮想通貨ビットコインの価格が再び上昇している。
4月、ビットコインの取引が世界で最も多いとされる中国で大手銀行が当局の指示によりビットコインの取引に関わる業務を一斉に停止したため、1ビットコイン=400米ドル前後まで価格が下落したが、5月に入ると一転、上昇し始め、6月に入ると600ドル台半ばにまで回復している。
2月に当時最大規模のビットコイン取引所だったマウントゴックスが、「預かっていたビットコインのほぼ全額を消失した」と発表して経営破綻、「500億円近い損失が発生した」と大々的に報じられたため、日本国内では「ビットコインそのものの信頼性は揺らいだ」との観測が一気に広まった。
しかし、今回の騒動はあくまでも取引所システムの欠陥が原因で発生した問題であり、ビットコインの暗号が破られて多大な損失を出したものではない。専門家や関係者の間ではむしろ「一定程度以上の人たちに通貨として信用されていれば通貨である」との定義に従えば、ビットコインは既に通貨として機能しているとの認識が定着しつつある。
金融問題に造詣が深いエコノミストの吉本佳生氏は、「ビットコインの一番の貢献は、『通貨はまだまだ進化する』という可能性を広く世界の人々に示したことである」と主張する。私たちは普段から通貨を空気や水と同じように扱っているため、現在の通貨システムには欠点があることに気づいていない。しかし、ビットコインの登場によって、通貨に関してこれからイノベーションが起きる余地は大きいことが分かったというのだ。
「中央銀行が存在しない」は利点か欠点か
ここで多くの人がビットコインを使うようになった理由をおさらいしてみよう。
まず挙げられるのが、「国家通貨(自国政府が法的強制力を持って流通させている通貨)」への不信である。