いまや山菜おこわも登場、
宇宙飛行士の体も心も癒やす宇宙食

2014.04.18(Fri) 藤田 貢崇
筆者プロフィール&コラム概要

 生き物は栄養を摂らなければ生きていけない。これは、人間が活動するいかなる場所にも、必ず「食べ物」を持って行かなければならないことを意味する。この時代、人類は宇宙にまで活動範囲を広げている。現在、国際宇宙ステーションでは若田光一宇宙飛行士が船長として任務を遂行中だ。

 このような宇宙空間での食事は、栄養面で宇宙飛行士の健康を維持するだけでなく、精神的なサポートのためにも不可欠となる。普段の生活で味わうことのない「宇宙食」について、紹介したい。

宇宙食には厳しい基準が

 宇宙船の中では、好きなものを好きなように食べられるわけではない。様々な条件をクリアしなければ食べ物を宇宙船に持ち込むことができない。その条件は宇宙開発の歴史や技術水準ととともに変わってきた。

 例えば、人類が初めて宇宙で食事をすることが考えられたとき、無重力空間で人間の摂食・消化能力がどのように変化するかはよく分かっていなかったため、飲み込みやすく消化されやすい流動食が選ばれた。現在は、宇宙飛行士の好みも取り入れられ、最初の頃よりはバラエティーに富んだ食事が提供されている。

 宇宙での生活は、宇宙船という隔絶された密閉環境の中で行われている。宇宙船内での事故や障害が発生することを防止するために、宇宙食には様々な条件が課されている。感染症や腐敗などによって宇宙飛行士の健康に問題が生じないように、食品には高い衛生状態が保たれていなければならない。宇宙船には多様な研究・実験のために多くの機器が搭載されており、宇宙食を調理するための十分な環境が整えられているわけではない。そのような状況でも食べられるものであることが必要となる。

 また、食べ物が飛び散ったり、容器が破損したりして内容物が飛び出てしまうと、重力がほとんどない環境では回収することが難しいばかりか、ほかの搭載されている機器に悪影響を及ぼす危険性がある。食品そのものや容器は、これらの事故が起こらないように工夫されていなければならない。

 国際宇宙ステーションなどでの長期間に及ぶ宇宙滞在では、長期間の保存にも耐えることが必要だ。当然ながら、宇宙飛行士の健康を維持・管理するための栄養が十分に確保されていなければならない。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

ジャーナリスト・翻訳家。科学技術や教育などの分野を中心に、数々の寄稿と翻訳を手掛ける。日本科学技術ジャーナリスト会議・理事。サイエンス映像学会・理事。2011年より法政大学経済学部教授。博士(理学)。この夏、動物行動学者ジェーン・グドールの食をテーマとした翻訳書も出版の予定。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。