強硬というよりは過激な対日・対米コメントで名を馳せている人民解放軍の羅援少将(退役)が、4月2日の「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」紙上で「領土問題が引き金になって日中軍事衝突が勃発する可能性はますます高まっており、中国は防衛する以上の能力を保有している」と再び怪気炎を上げた。

 羅援“少将”の今回の強硬発言は、ヘーゲル国防長官による日本訪問ならびに中国訪問を睨んでの恫喝発言といった意味合いもある。同時に、羅援をはじめ人民解放軍強硬派による「近い将来に日中軍事衝突が起きた場合には人民解放軍が優勢である」といった論調に反対あるいは疑義を差し挟む勢力に対して、反論を加えておこうといった狙いもあったようだ。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙が英語圏では比較的読者層が広いことを念頭に置いての発言である。

「航空自衛隊の方が強い」論への反駁

 羅援“少将”が反論を加えようとしたのは、日本のメディアやカナダベースの中国軍事分析専門誌である漢和ディフェンスレビューなどによる「尖閣諸島周辺空域で日中航空戦力が衝突した場合、航空自衛隊の方が優勢である」という以下のような主張に対してである。

 航空自衛隊の戦闘機F-15は人民解放軍空軍や海軍の新鋭戦闘機に比べると年代物ということになる。しかし、航空自衛隊パイロットと人民解放軍パイロットの訓練時間やプログラムを考えると、どう考えても航空自衛隊に軍配が上がる。航空自衛隊パイロット1名は少なくとも人民解放軍パイロット3名に相当する(「漢和ディフェンスレビュー」)。また、戦闘機自体に関しても、F-15の信頼性や搭載ミサイルの性能それに近代化改修プログラムなどを考慮すると、F-15が人民解放軍の新鋭戦闘機に比べて圧倒的に力不足な旧式機というわけではない。したがって、人民解放軍が尖閣上空の航空優勢を自衛隊から奪取することなどほとんど考えられない──。

 羅援少将は「このような主張は日本を利するために、一般の人々の考えを混乱させる欺瞞戦術である」と一蹴する。そして以下のように中国側の“圧倒的優勢”の理由を述べ立てる。

 日本側の尖閣に近接する航空基地は沖縄の那覇基地たった1カ所にすぎない。そして那覇基地をベースにして尖閣に投入できる戦闘機はわずか30機のみで、それも1980年代から使われているF-15である(漢和ディフェンスは沖縄に配置されているF-15搭乗員たちは日本最強の熟練パイロットである、と羅援に釘を差している)。