アメリカのケリー国務長官が韓国と中国を訪問するのに先立って岸田文雄外相が訪米し、ケリー国務長官ならびにライス安全保障担当大統領補佐官などと会談した。ケリー国務長官は岸田外相に対して「日米同盟の強化こそがアメリカのアジア再均衡戦略の鍵を握っている」といった“お決まり”のコメントを述べていた。
日本のメディアの間では、「日米同盟の強化」というのは、もはや両国首脳や外交・防衛当局リーダーが会談した際の決まり文句のような表現になってしまっているが、今回のケリー長官の表明は「中国や韓国に対して日米同盟が強固であることを再認識させたもの」と評価すべきである、と日本に都合の良いように考えたがる向きもあるようだ。
「中国を封じ込める立場を明確に打ち出すべし」
しかしながら、アメリカの「対中強硬派」(軍関係者、研究者)に分類できる人々の多くは見方が異なる。オバマ政権が「アジアシフト」あるいは「アジア再均衡」と口にしていても、実際には国防予算を増額させたわけでもないし、東アジア地域に対処する軍事部門(とりわけ太平洋艦隊、太平洋海兵隊、太平洋空軍)が目に見えて増強されたわけでも今後飛躍的に増強されるわけでもない、といった現実を取り上げて、オバマ政権の“公約不履行”を糾弾している。
もっとも、アメリカの国防予算が大幅に削減されている中で太平洋方面の軍備を著しく増強することは、中東やヨーロッパ方面からアメリカ軍事力を大幅に撤退させない限り神業に近いことは、これらの専門家でなくとも容易に理解できるところである。
これら対中強硬派の中でも「封じ込め派」と見なせるタカ派陣営は、オバマ政権は過去60年以上にわたってアメリカを中心に維持してきた国際的原則である公海の自由航行ならびに自由飛行の秩序に挑戦し始めた中国を封じ込める立場を明確に打ち出すべきである、と主張し始めた。
つまり、アメリカは、同盟諸国(日本・韓国・フィリピン・タイ・オーストラリア)ならびに友好諸国(台湾・ベトナム・インドネシア・マレーシア・シンガポール)による中国に対する反撃態勢を支援する姿勢を明確に打ち出す必要がある、と指摘している。
レッドラインの設定が衝突を防ぐ
このような「封じ込め派」は、アメリカが示すべき具体的姿勢の第一歩は、アメリカが、勢力圏として場合によっては干戈(かんか)に訴えてでも維持すべき防御ライン、すなわち中国が越えてはならないレッドラインを、東アジア地図の上に明示することである、と述べている。