2014年1月24日付の毎日新聞(東京夕刊)にて、製薬会社のノバルティスが自社の白血病治療薬の臨床試験に関与していたことが報じられた。

 新聞記事では事件の概要が説明されたのみであったが、今回は臨床試験に参加された患者さんの側から、法律的にどんな問題が生じているのかを考えてみたい。

事件の概要

 「製薬会社ノバルティスファーマの社員が自社の白血病治療薬の臨床試験に関与していた問題で、複数の社員が実施計画書や患者の同意書の作成に関わった可能性があることが関係者への取材で分かった。試験開始前から社員が準備に加わっていたとみられる。研究チームは企業の支援を受けない前提で医療機関の倫理委員会から実施の承認を得ており、ノ社と研究の中心となっている東京大病院が調査している」

 「(中略)実施計画書には『研究の計画、実施、発表に関して可能性のある利益相反はない』と明記され、研究チームはノ社から資金や人的な支援を受けないことを表明していた」

 「(中略)ノ社が2012年度に、臨床試験の責任者を務める東京大病院の黒川峰夫教授の研究室と参加7医療機関に奨学寄付金計1100万円を出したことについては、ノ社と東京大病院は『試験とは直接関係がない』と説明している」

 「試験は12年5月に始まった。白血病患者が服用する薬をノ社の新薬に替え、副作用の違いを患者へのアンケートなどから調べている。全国の22医療機関が参加する」

 「この試験では、営業担当の社員8人が本来は医師間で行うべき患者アンケートの受け渡しを代行。アンケートを多く集めるほどコーヒー店の金券などを受け取れるルールで競い、上司も認識していた(後略)」

(以上、毎日新聞 2014年1月24日 東京夕刊 「ノバルティス社:白血病薬試験、計画書にも社員関与か 電子ファイルに社名」より引用)

 研究に参加したある病院の話によると、臨床試験を担当した医師は、研究チームにノバルティスが深く関わっていること、特に研究チームの運営を以前より同社のMRたちが実質的に行っていたことを認識していた、という。

 そしてその病院では実際に2人の患者さんが、現在投薬しているノバルティス社の白血病治療薬グリベック(イマチニブ)から、同社の「新薬」であるタシグナ(ニロチニブ)に治療薬を変更している。