原発事故の避難で自殺、東電に賠償命令 因果関係初認定

福島第一原子力発電所で、放射能汚染水対策のための「凍土壁」の建設現場で放射線量を測定する東京電力の職員〔AFPBB News

 東日本大震災から4年半が経った。町の様子も様変わりし、社会の関心も薄れたように感じられる。

 原発も例外ではない。最近の報道は、もっぱら汚染水に関するものばかり。しかも報道内容はまちまちで、専門家によって意見がかなり異なっている。専門家ではない人には何が真実なのか、よく分からないというのが現実ではなかろうか。

 私自身、南相馬に医師として赴任して半年が経ち、メディア報道を通じてではなく、自分の目で福島第一原子力発電所を見たいという思いが募っていた。その矢先、福島第一原発を見学する機会を得た。

 やはり聞くと見るとでは大違い。私にとって本当に貴重な経験となった。そこで、自分の目で見て感じたこと、考えたことを正直に書きたいと思う。

毎日150往復するバス

 Jヴィレッジをご存知だろうか。楢葉町と広野町にまたがる、このスポーツ施設は、幸か不幸か福島第一原発から半径20キロ、つまり避難対象地域との境目に位置している。このため、原発事故収束のための拠点施設としての役割を担うこととなった。

 毎朝、6700人もの作業員が、Jヴィレッジからバスに乗り込み、片道40分かけて福島第一原発へと向かう。バスは、早朝から夜遅くまで動き、150回もJヴィレッジと原発を往復する。

 我々もJヴィレッジからバスに乗り込み、福島第一原発へと向かった。道中、楢葉町と富岡町を通過した。ご存知のように、楢葉町はつい数日前に避難指示が解除されたばかりである。

 除染作業で発生した土砂を入れるまっ黒なフレコンバックの数が原発に近づくにつれて増えていく。この景色は、何度見ても心を締めつけてくる。黒い大量の袋が整然と並べられている様だけは慣れることができない。

 国道6号線を北上し福島第一原発へと着いた途端、視界の半分を巨大な大量のタンクによって占領されてしまった。1日に約300トンもの地下水が原子炉建屋内に流れ込んでいるため、タンクは今もなお増え続けている。

 施設内では厳重な管理体制のもと、放射性物質のスクリーニングが徹底して行われていた。作業員の方々は、流れ作業の如く大きな器械の中を通り抜けてセキュリティーを通過していく。その光景はまるで機械に人間が支配されている近未来の映画の世界のようだった。