先日、大阪府寝屋川市の男女中学生が殺害された事件の容疑者が南相馬市で除染作業を行っていたことが報道され、物議を醸しました。それをきっかけに「除染中止を求める声が高まっている」というニュースも流れています。
しかし、実はこの事件の報道が起きる前から福島県内では作業員による危機感は強く存在していたのです。特に、子供の通学路の近くに作業者向けプレハブ住宅が建つことに強い不安を感じる親御さんは少なくありません。
「やっぱりその周りの路上だけタバコの吸い殻とかお酒の空き瓶とかが転がっているし、子供が帰るくらいの時刻には仕事を終えて戻ってきているし・・・。心配です」
先日の事件の後も、学校では、作業者向けプレハブ住宅の近くを登下校する子供は気を付けるように、という通達が回りました。
誤解のないように申し上げたいのは、これは、除染作業員の方一人ひとりの人格とは関係ない、ということです。実際に地元から就職する作業員もいるなか、福島県の方々の除染作業員に対する感情は複雑です。
これまで福島県で起きてきた様々な問題と同じように、除染の問題もまた、除染作業員=悪、という単純な公式で割り切れるものではないようです。
地元作業員の苦悩
「やっぱりね、鼻血の漫画とか、いろいろ報道されるストレスは多いですよ・・・」
外来にいらした60代の作業員であるAさんは、「周りの目によるストレスが今回の新聞沙汰の前からあった」とつぶやきました。地元に家があり、地域で集会のまとめ役などもされているようで、ごく真面目な方、という印象でした。
たとえ住民との軋轢があったとしても、全くの外から来た除染作業員の方は、それを感じる機会は少ないでしょう。割り当てられた住居に住み、現場までの行きかえりは乗り合いバス、という生活では、住民の方と接触する機会は少ないからです。
しかし、当然ではありますが、除染作業員の一部は地元の住民が占めています。特に地域のつながりの強い相馬のような地域では、除染作業員の評判が下落することで、このような方々が精神的に追い込まれることにもなりかねません。