筆者の住んでいる山形の2013年の大きな話題の1つが映画「おしん」の公開だ。庄内地方を中心にオール山形ロケが敢行されたらしい。
山形と「おしん」
おしんは、山形の最上の寒村に生まれ、貧困のために庄内地方の酒田に奉公に出て、様々な経験をしながら成長していく女性の一代記だ。
筆者は山形に住んで4年になるが、あの「おしん」が山形発なのは、実は中国の知人に教えてもらった。おしんが自分で人生を切り拓いていく姿が、急速に発展する社会で同じように頑張っている中国の女性に圧倒的に支持されたそうだ。
医師のキャリアパス
筆者は医学部の教員であり、学生にキャリアの話をする機会も多いが、医学生にとっておしんのように「自分で人生を切り拓いて」いくようなキャリアを積むのは今でも簡単ではない。一人前の医師になるための「修業期間」が長く、ある程度「決められたレール」を進むことが必要だからだ。
例えば、国家試験に合格して医師になると、まず2年の臨床研修がある。それが終われば、それぞれの専門科(循環器内科や消化器外科など)の研修がある。その途中で、大学院に入学することもある。
これらの教育のほぼ大半は大学医学部の臨床講座(医局)ごとで行われており、専門科と所属する大学医局を決めればほとんど決められたコースでトレーニングを積むことになる。
このシステムはある一定のレベルの医療技術や知識を身につけるためには非常に有効で、筆者もその恩恵にあずかった1人である。ただ、その方法も現代の医療の進歩に合わなくなってきており、最近は様々な改革が行われている。
本当に大事な能力は?
診療に必要な医療技術や知識を得ることは医師としては必須である。しかし、高い価値を生み出すような医師になるためにはそれだけでは十分ではない。
医学・医療の進歩は速い。キャリア初期で受けた受け身のトレーニングで得た知識や技術は時代遅れになってしまうこともしばしばである。
では、高い価値を生み出し続けるような医師になるにはどのような能力が必要なのか? 筆者は、「自分の頭で考え、主体的に行動する力」だと思う。リーダーシップとも言える。