新年初回ですので、何かお正月らしい話題をと思っているのですが、以前、初詣の原点が奈良時代以来御所や国府での礼拝にあるという話を書いたことがありました。そこで皇室の話題を取り上げてみたいと思います。

 年の瀬も迫った12月半ば、天皇誕生日の記者会見で明仁天皇が語った内容に大変感銘を受けました。

 と言うのも、天皇という立場にあって、言える範囲のことを慎重に考えたうえで、いま非常に大切なメッセージを国際発信していたからです。英訳も宮内庁のホームページから世界公開されています。

日本国憲法の遵守

 天皇の記者会見は80年間の人生を振り返って、最大の記憶は第2次世界大戦であった、というところからスタートしています。そのうえで、

 「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。戦後60年を超す歳月を経、今日、日本には東日本大震災のような大きな災害に対しても、人と人との絆を大切にし、冷静に事に対処し、復興に向かって尽力する人々が育っていることを、本当に心強く思っています」

 という表現を通じて、いま日本が国際的に発信すべきメッセージを天皇という立場から過不足なく発信しています。まず何より「守るべき大切なもの」として「平和と民主主義」を挙げ「日本国憲法」の遵守に触れています。

 天皇はあらゆる意味で政治的な発言ができません。あくまで歴史叙述と個人の述懐というスタイルを取りながら、2013年末の段階で「日本国憲法遵守」に天皇が言及することの重要性は計り知れないものがあります。

 と言うのも、現在諸外国が最も危険視しているのは「日本の右傾化」であり、特に自民党の作った憲法改正案は大変危ないものとして、米国はじめ東アジア近隣諸国、ほぼすべての国連加盟国が注意をもって推移を見つめているからにほかなりません。

 果たせるかな、天皇誕生日からたった3日後の12月26日には、安倍晋三内閣総理大臣の靖国神社訪問がありました。

 中国や沖縄問題なども念頭にこの時期こういうアピールをしてみせたのかと思いますが、これに対して米国大使館から即日「米国は日本の指導者がこのような行動を取ったことに失望した」という、非常にシリアスな声明が発表されました。原文も引いておくと、

Japan is a valued ally and friend. Nevertheless, the United States is disappointed that Japan's leadership has taken an action that will exacerbate tensions with Japan's neighbors.