南シナ海で中国海軍がアメリカ海軍に対して軍艦同士の衝突も辞さないほど強硬な行動に出ていたことが明らかになり、両国政府が非難の応酬をしている。
そんな中、中国共産党の李克強首相は、米中合同商業貿易委員会の会議に出席するため北京を訪問中のアメリカ側代表団に対して、「世界最大規模の経済大国同士である米中両国には小異はあるものの長期的には国益が一致する以上、些細なトラブルによって両国の友好関係が妨げられるようなことがあってはならない」と呼びかけた。
それに対して、アメリカ代表団を率いたペニー・プリツカー商務長官は「両国間の強固な経済的結びつきこそ米中双方にとって最大の国益と言える」と応じた。
見くびってはならない中国海軍の進化速度
多分に外交辞令とはいえ、このようなオバマ政権幹部の対中態度に対して、米海軍やシンクタンクなどの対中海軍戦略専門家たちは、「ワシントンDCの政策決定者たちは中国の軍事的脅威を“真に”深刻に受け止めていないようである」との危惧を表明している。
そして、このような対中海軍戦略家たちと話し合っていると次のような“嘆き”をしばしば耳にする。アメリカ政府高官たちや連邦議員の多く、それにメディアなども、「確かに中国人民解放軍は30年前より随分近代化していることは間違いないであろうが、とてもアメリカ軍とまともに比較できるようなシロモノではない」との単純なイメージを抱いているようである。というよりは、人民解放軍の近代化のスピードや、その内容に関する確たる知識や理性的な分析を持ち合わせていないにもかかわらず、そう思い込みたいと言った方がいいかもしれない。
このような傾向は、歴史的経緯がアメリカとは比較にならないほど複雑な日本においての方が、より一層強いものと筆者は考えている。
これらの米海軍などの対中戦略家などによると、人民解放軍とりわけ中国海軍の各種軍艦や搭載兵器の近代化速度と身につけつつある技能やドクトリンなどの進化速度を冷静に分析すると、今日時点での中国海軍は明日にはすでに過去のものとなってしまうと言っても過言ではない。