特定秘密保護法案の参院成立をめぐって、世論が沸騰しています。タイミングとしてはこれについて記すような時期と思いますが、演奏日程のため詳細を十分押さえられていないため、全面的に触れるのは他日としたいと思います。

 こうした趣旨の法律は各国にあるものと思いますが、具体的な条文の文言が曖昧で、確かに運用によってはどっちに転ぶか分からないという懸念が出ても仕方がないものを、拙速に可決へ持ち込もうとしているように見えます。

 ここで1つ思うのが、特定秘密指定の最大有効期間が「60年」という時間の長さでした。この法案が最初に出てきたとき私は「5年」という期間でこれを認識していたのですが、5年と60年では意味が違う。

 分かりやすく言えば、私自身で考えると5年後はたぶん生きている可能性が高いと思いますが、60年後は地上にいない公算が大きい。今私は48歳なので、5年後は53歳で社会生活を営んでいたいと思いますが、60年後の108歳は、仮に生きているとしてもどの程度まともであるか分かりません。

 私個人の観点からすれば、60年後と100年後、あるいは600年後というのは、すべて「永遠」(に見ることがない未来)という点で共通してしまう、少なくとも「特定秘密」であれば「永久に知ることがなかった」ということになってしまう。そういう時間の長さになってしまう。

 つまり人間にとって50年とか60年、あるいは米国の秘密保持年限である75年といった時間は、すでに「社会的」な時間の長さと言うより「歴史的」な過去のタイムスパンになってしまう。この「時間の長さ」について、考えてみたいのです。

全生命の寿命とウラン同位体半減期

 私が秋シーズンの演奏予定で忙しい、といった数カ月のタイムスパンで変わらないもの、そうした長時間不変の代表的なものに放射性元素の半減期があります。例えば核燃料の材料を見てみると、

●準安定なウラン238は44億6800万年
●核反応性を示すウラン235は7億380万年

 気が遠くなるほど長い半減期を持っています。仮に今5パーセントの濃縮ウラン燃料があるとすると、95%の(準安定な)ウラン238と5%の(反応性の高い)ウラン235が混ざっていることになります。

 これは天然界でのウラン同位元素の存在比率は

●安定U238:不安定U235 = 99.28 : 0.72

 で、自然界にあるウラン鉱ではウラン235は1%もないわけですから十分高濃度、だからこそ「低濃縮ウラン」核燃料として反応が起きることになります。

 このウランの半減期をほかの年代と比較してみましょう。

 そもそも地球の年齢が45.4億年±0.5億年とされます。ウラン238の半減期は、つまるところ地球の年齢とほぼ同じ程度ということになる。