本コラムでも幾度か紹介したように、東日本大震災に際して「トモダチ作戦」に参加したアメリカ海兵隊将校たちは「日本にアメリカ海兵隊的能力を有した組織が存在していたならば、相当多数の人命が失われずに済んだであろう」との実感をよく口にする。

 幸か不幸か、中国共産党政府による尖閣諸島周辺海域への覇権主義的侵攻行動に触発されて、日本政府もようやく重い腰を上げ自衛隊に海兵隊的能力を持たせようという方向性が打ち出されるに至った。

トモダチ作戦でLCUに乗り込み気仙沼大島に向かう海兵隊救援部隊(写真:拙著『写真で見るトモダチ作戦」並木書房より』)

海兵隊的能力とはなにか?

 自衛隊にアメリカ海兵隊的能力を持たせようという具体的動きが進展しつつあることは、日本の国防にとって極めて喜ばしいことである。しかしながら、海兵隊的能力をあたかも尖閣諸島奪還能力のごとく誤解している向きが存在していることを、筆者はじめアメリカ海兵隊・海軍関係者たちは危惧している。

 海兵隊将校たちによると「政治家を含めてアメリカの人々のほとんどが海兵隊的能力というものを正確に理解しているとは言えないのだから、日本の人々の多くが誤解しているのは無理からぬことだろう」という。多岐にわたる活動をしているアメリカ海兵隊の能力を理解するのは、確かになかなか困難ではある。

 そのようなアメリカ海兵隊的能力を一言にまとめると、(1)アメリカにとっての緊急事態が生起した際には、いつ、いかなる時にでも即応してスピーディーに展開する「緊急展開能力」、(2)様々な地域に海から海と空を経由して接近する「水陸両用戦能力」、そして(3)陸上・海上・空中での作戦行動を自己完結的に実施する「統合作戦能力」、といった3つの軍事能力ということになる。

 重要なのは、これらの3つの能力はそれぞれ密接に連携しあっており、それらを自己完結的に併せ持つのが海兵隊的能力ということである。

 このような海兵隊的能力を理解するには、少なくとも巷でよく言われている「尖閣諸島奪還」といったシナリオを通してよりは、むしろ東日本大震災や先週発生した伊豆大島土石流といった大規模自然災害に対する救援活動のシナリオを通した方が、より的確に理解できる。