これまで、バイオマスが今後の再生可能エネルギーとして最も期待されていること(第1回)、OECD(経済協力開発機構)諸国では化石燃料のうち石油・石炭が減少し、バイオマスとその他再生可能エネルギーが増加すること(第2回)を紹介してきた。

 原子力発電所は2008年の時点では伸びると予想されていたが、福島第一原子力発電所事故以後は不明である。いずれにせよ、バイオマスの重要性は増加しても減少することはない。

米国がバイオマス利用に熱心なのは安全保障上の理由から

ナショナル・バイオフュエル・アクション・プラン(2008年)

 ところで、バイオマスからのエネルギー、すなわちバイオエネルギーの中で、穀物から作るバイオエタノールと木質資源(主に木材)から作るバイオ燃料は大きく異なる。この違いを米国の例で示そう。

 米国と言えば、京都議定書の批准をしていなかったり、どうも環境対策に熱心ではないと思われる方々も多いのではないだろうか。ところが、実際にはバイオマスの利用については非常に熱心なのである。

 2008年のジョージ・W・ブッシュ政権下で、バイオマス研究開発委員会(Biomass Research and Development Board)が、「ナショナル・バイオフュエル・アクション・プラン」というのを発表した。

図1:米国の石油生産能力と消費(出典:ナショナル・バイオフュエル・アクション・プラン、2008年)

 それによると、バイオエネルギーによるCO2削減より先に述べられている重要なことは、米国国内での石油生産の減少である。

 図1(和文は著者)のように、年々石油の米国内での生産が減少しているが、需要は伸び続けているのだ。

 シェールガスでガスの供給は増しているものの、石油の生産が減少していることに変わりはない。それに伴い、石油の輸入が次第に増加している。

 これを米国は安全保障上の問題として捉えている。国内で再生可能なエネルギーで、しかも石油の代替になるものを作る。この方針はバラク・オバマ政権になっても引き継がれた。