一度、日本での集団的自衛権論議を離れて、グローバルスタンダードではどうなっているかを見てみたい。

 筆者自身が2001年10月10日、参院予算委員会で取り上げた事柄をまず紹介したい。同年9月11日、アメリカでの同時多発テロがあり、その報復ということでブッシュ政権がアフガニスタン攻撃を開始して2日目の時点であった。

 当時、小泉純一郎内閣で外相は田中眞紀子氏であった。以下は、その時のやりとりである。

(筆坂)外務省でも結構ですが、NATOは今度のアメリカでの同時多発テロに対して、10月2日、NATO条約第5条に基づいて集団的自衛権の行使を正式に決定しました。翌3日にはアメリカがNATOに対し集団的自衛権の行使による支援要請を行い、そしてNATOの大使級理事会は集団的自衛権の発動として8分野の支援を決定いたしました。

 この8分野というのはどういうものでしょうか。

(田中外相)1は情報の共有及び協力の向上、2、テロリストによる脅威に一層さらされている、またはその可能性のある国家に対し、個別的または集団的に適切かつ、みずからの能力に応じて支援を提供すること、3、関連施設の安全を向上させるための必要な措置、4、テロに対する作戦を直接的に支援するために必要とされるNATOの責任地域における特定のアセットを補てんする、5、テロに対する作戦に関連する軍事飛行のために包括的上空飛行許可を提供する、6、給油を含むテロに対する作戦のために港湾及び飛行場へのアクセスを提供する、7、常設艦隊の一部を東地中海に展開する用意、8、空中早期警戒戦力の一部を展開する用意等でございます。

 要するにNATOは、直接の武力攻撃だけではなく、それを支える兵站活動を集団的自衛権行使の一部、すなわち武力行使と見なしているということである。

 この根拠は当然のことだが、NATO条約にある。その第5条では、「締約国は、そのような武力攻撃が行われたときに、各締約国が、国際連合憲章第51条の規定によって認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する」とされている。