1950年代後半、米国で注目を集めた文学運動、ビートジェネレーションの代表作「On the road」が初めて映画となり、現在日本でも劇場公開中である(邦題『オン・ザ・ロード』)。

1950年代のベストセラーが今ようやく映画化

映画「オン・ザ・ロード」

 世の慣習に挑戦するようにさすらい続ける若者たちを描いたロードムービーは、広大なる北米大陸を駆け巡る映像で、見る者の旅への欲求を刺激する。

 そして、こんな内容のベストセラーなら、どうして今まで映画化されなかったのか、と疑問がわいてくるかもしれない。

 しかし、ジャック・ケルアックの原作小説は、追いかけるべきストーリー性に乏しく、そのまま商業映画としてドラマ化するのには向いていなかった。

 そのため、『ゴッドファーザー』(1972)の監督として知られるフランシス・フォード・コッポラが1970年代にはすでに映画化権を獲得していたにもかかわらず、企画は何度も流れ、チェ・ゲバラの若き日を描くロードムービー『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)で成功を収めたウォルター・サレス監督の手によって、今回、ようやく映画化が実現したのである。

 1947年のニューヨークに始まるこの映画の語り手となるのは若き作家サル・パラダイス。そして、そのサルに多大な影響を与えるもう1人の主人公の名はディーン・モリアーティ。

 サルはケルアック自身、ディーンはその後ビートジェネレーションの象徴的存在となるニール・キャサディがモデルとなっていることはよく知られた事実である。

 1951年、自らの体験に基づくこの書を最初にケルアックが書き上げた時、登場人物は実名で綴られていた。

 ところが、創作活動が途中で分断されぬようにと、タイプ用紙をあらかじめつないでおいて、3週間で一気に書き上げたという伝説に彩られた原稿はすぐさま出版には至らなかった。

 そして、改行もないその言葉の洪水を整理する編集作業がなされ、6年後、ようやく出版された時には、名前や設定も変わっていたのである。