ここ何カ月か、ドイツに出向いて見聞してきた彼の地の自動車産業とその技術の最新動向を紹介してきたが、それも一段落というところで、ドイツ自動車産業が送り出してきた世界の市場に向けた中核製品の最新版、第7世代のフォルクスワーゲン・ゴルフ(以下「ゴルフ7」)の「クルマとしての実力」について、私自身が体感し、分析した内容をまとめておくことにしたい。ものづくり企業の動向や、その中で生み出される技術も、結局はそのプロダクツに結実してこそ意味があるのだから。
ゴルフ7に関しては、3月にフォルクスワーゲン(VW)グループの年次経営報告記者会見に参加した際に、欧州仕様を短時間「味見」する機会があった。その後、日本でも報道関係者向け試乗会が開催され、さらに現状で日本市場に投入されている2仕様を、それぞれ1週間、1500キロメートルほどずつ走らせ、「クルマとの生活」の相手としてはどうなのかをシミュレーションするあたりまでは付き合うことができた。
現状で日本市場に投入されている2仕様とは、まず1.2リッター過給エンジンを搭載し、リアサスペンションがいわゆるコンパウンドクランク形態のトーションビーム方式(左右連結・半独立型)となる「コンフォートライン」、もう1つが1.4リッターにターボ過給を組み合わせる一方、負荷が小さい状況では4気筒のうち2気筒を「休止」させる機能を実装したエンジンを搭載、リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン形態の独立懸架を組み込む「ハイライン」である。
コンフォートラインの装備を簡略化したベースグレードの「トレンドライン」もラインアップに加わり、さらに高性能版の「GTI」についても日本導入の準備が進んでいるが、まずは上記2仕様を確認すれば、日本市場導入初年度のゴルフ7の実力を読み解くことができる。
「低く、長く」なった空間デザイン
新しいクルマとの対面は、いつも居住空間の成り立ちと「住み心地」の確認から始まる。ゴルフ7のドライバーズシートに身体を落ち着けて自分を包む空間を感じ取る、その第一印象は「(先代と比べて)着座位置が少し低くなり、フロントウインドウと左右のAピラーの傾斜も強まり、天井へと連なる面が頭に近づいた」というものだった。
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