英エコノミスト・グループは5月19日に東京で、「ベルウェザー・シリーズ・ジャパン──アジア太平洋における金融の未来像」と題するカンファレンスを実施した。激変する世界の金融とアジアにおける未来像が熱心に議論された。

 その中から興味深いテーマをいくつか選んで紹介している。第1回は、元財務大臣で、たちあがれ日本共同代表の与謝野馨氏のインタビューをお送りした。

左からエコノミストのグラハム・デイビス氏、日本政策金融公庫副総裁の渡辺博史氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ会長の玉腰良介氏、三井住友フィナンシャルグループ社長の北山禎介氏(写真提供:エコノミスト・カンファレンス)

 第2回はアジアの金融アーキテクチャーで日本が占める位置について、公的金融機関の立場から、日本政策金融公庫副総裁で国際協力銀行経営責任者でもある渡辺博史氏の基調講演をお届けした。

 3回目の今回は、民間金融機関の立場から、三菱UFJフィナンシャル・グループの玉越良介会長と、三井住友フィナンシャルグループの北山禎介社長が講演した内容をお伝えする。後半には、日本政策金融公庫の渡辺副総裁を交えた3人による熱のこもったディスカッションの様子もお送りする。

三菱UFJフィナンシャル・グループ玉越良介会長

アジアの金融ビジネスの方向性を示す4つのポイントとは?

三菱UFJフィナンシャル・グループ会長 玉越良介氏(写真提供:エコノミスト・カンファレンス)

 今後、民間銀行がアジアで金融ビジネスを展開していく際、念頭に置くべきポイントは4つあると思います。

 第1に域内の商流拡大と直接投資・M&Aなどの多様化です。アジアの商流は、中国を中心とする東アジア、インドを中心とする南アジア、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オセアニアという4点によって形成されています。

 ここにきて、例えば中国とインド、中国とASEANの間の輸出入、中国とオーストラリアの資源関連貿易などが顕著に増加している。この流れはACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)や、ASEANとインド、オセアニアとのFTA(自由貿易協定)協議の進展などによりますます加速していくと思われます。

 2つめは、日本企業の「アジア内需」シフトです。従来、日本企業の多くはアジアを輸出拠点として位置づけていました。

 しかし国内の内需不振、人口減少による将来的な市場縮小などを見据え、成長性が高く人口も多いアジアを市場として捉えるようになってきた。これには最近、欧米で過剰消費に依存した地域への輸出の不確実性が明らかになったことも影響しています。