英エコノミスト・グループは5月19日に東京で、「ベルウェザー・シリーズ・ジャパン──アジア太平洋における金融の未来像」と題するカンファレンスを実施した。激変する世界の金融とアジアにおける未来像が熱心に議論された。
その中から興味深いテーマをいくつか選んで紹介する。第1回は、元財務大臣で、たちあがれ日本共同代表の与謝野馨氏のインタビューをお送りする。司会進行はThe Economist東京支局長 ヘンリー・トリックス氏と経済評論家の勝間和代氏。
「選挙のため」が財政赤字をここまで増やした
日本の財政が悪化した1つの要因は、政策立案に際して政治家が選挙を過剰に意識してきたことだと思います。そもそも日本は選挙が多過ぎるのです。
参議院選挙は3年に1度、衆議院も平均するとほぼ3年に1度行われています。
1年半ごとに国政選挙があり、その間統一地方選もあるとなれば、どの政党も絶えず選挙対策を考えないわけにはいきません。
もちろん財政の実情を踏まえてものを言ってきた政治家もいますが、多くはポピュリズムに走って口当たりのいいことを連呼してきました。
国政の仕事の本質を一言で言えば、国民の所得を然るべきところに移転するということです。例えば、年金、医療、介護といった社会保障制度を充実させるのなら、所得の一部をそちらに回さないといけない。
しかし政権与党は選挙が恐いものだから、それをせずに市場からお金を借りてきました。そういうことのできる時代が長らく続いたわけです。ここまで借金が膨らんだ責任は、役人ではなく政治家にあります。
政治と行政の関係、特殊法人などは本質的な問題ではない
政治と官公庁の関係に原因があるという見方は、必ずしも正しくありません。例えば橋本政権の時には官邸に強い指導力がありました。当時は梶山静六さんのような人がにらみを利かせていると、どの役所も言うことを聞いたものです。
近年も政治が各省を押さえられる状況になってきており、自民党時代には経費削減ということをきちんとやったと思います。
行政のスリム化が必要と言われますが、実のところ日本は世界で一番公務員が少ない国です。民主党が7兆円削減すると言いながら、結局6900億円にとどまったことからも分かる通り、財務省の仕切りは甘くありません。
無駄なことにお金を使わせないという伝統的な体質は今も生きています。