今回の「米中戦略・経済対話」では米国の後退をまざまざと感じさせられた。米国のオバマ政権が中国を国際社会の普通の一員として懸命に招き入れようとするのに対し、中国は傲然(ごうぜん)と構え、独自の道を強調し、米国側に人権についての説教までする、というふうなのだ。

 同時に、米中両国がいくら協調をうたってみても、なお深い断層が間に横たわることが印象づけられた。対話をすればするほど両者間の距離の遠さが裏づけられるという外交上の皮肉な現実だとも言えよう。米中関係の動きで国運さえも左右されるわが日本にとっては、今回の米中対話の展開は特に教訓が多かった。

 米国と中国の戦略・経済対話は7月10、11の両日、ワシントンで開かれた。中国側は汪洋副首相を筆頭とする大型代表団を送りこみ、米国側はジョセフ・バイデン副大統領、ジョン・ケリー国務長官、ジャコブ・ルー財務長官らが協議に応じた。

 米中戦略・経済対話では米中両国が政治や安全保障、経済、金融と、幅広い領域にわたる両国関係の諸課題を論じ合う。この対話はブッシュ前政権時代からあったが、オバマ政権の登場とともに新たな対中政策が組み立てられ、その枠内で改めて重視されるに至った。オバマ政権になってから今回は5回目の米中戦略・経済対話となる。

 しかし今回の米中対話はやや奇異な感じをも与えた。なぜなら米中間ではオバマ大統領と習近平国家主席という両首脳がつい1カ月ほど前の6月上旬に会談したばかりだったからだ。しかもその首脳会談は両首脳が延べ2日間、合計8時間にもわたって話し合いを続けるという異例の長さだった。だからその直後に両国政府の副大統領、副首相レベルでの協議がなぜあえて必要なのか、という疑問さえあった。もっともこの対話はずっと以前からこの時期に予定されていたことも現実のようである。

政治や安全保障面で浮き彫りになった米中の断層

 さて7月11、12両日の対話がどんな内容だったのか。その実態は会議終了直後の両国高官たちの発表により、あらましが判明している。

 まず、今回の対話の具体的な成果としては、米中両国が相互の投資協定への本格交渉を始めることが合意された。また両国は気候変動への対応で協力を強めることも合意した。

 両国のこうした大規模な政府間協議や経済面での新たな合意という進展だけを見ていると、つい「G2」という標語が想起される。G2とは米中両国が2国だけで世界の主要課題、特にアジア・太平洋地域の諸問題を処理し、管理していくという概念である。「米中2極」と呼び換えてもよい。オバマ政権の誕生当初、中国に対する融和的で丁重で、いかにも中国だけを最重視するかのような姿勢とともに一部の識者から提唱された概念、そして構想でもあった。