外されたビタミンF、消されたビタミンH

謎多き栄養素「ビタミン」の整理整頓

2013.07.12(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 一方、「ビタミン様物質」というものもある。ビタミンのような働きをするが、ビタミンの定義に当てはまらない物質のことをいう(表2)。

表2 ビタミン様物質
カッコ内のビタミン名は過去に呼ばれていた俗称であり、ビタミンとしては定義されていない。
参考:国立健康・栄養研究所ホームページを参考に筆者作成

 先に挙げたパントテン酸はビタミンだが、カルニチンはビタミン様物質である。このようにビタミンと付いたり、付かなかったり、ビタミンのようだがビタミンでなかったりとまぎらわしいビタミンの名称は、以下のような、ビタミンの概念が作られる経緯を象徴するものなのだ。

ビタミン欠乏症で壊血病にかかった船乗りたち

 ビタミン発見のきっかけは、栄養不足による欠乏症だった。200年以上前から、長期間の航海に出る船乗りたちが壊血病になるのは、新鮮な野菜や果物の不足によるものであると知られてはいた。脚気やくる病もバランスの悪い食事によるものと考えられていた。だが、食品中のどのような化学物質の欠乏によるものかまではなかなか分からなかった。

 そうした中、1912年にポーランドの生化学者カシミール・フンクが米ぬかから脚気を防ぐ物質を取り出すことに成功した。フンクは、この物質を、「生命に必要な」という意味のラテン語“Vital”と、その物質の構造の呼び方である“amine”(アミン)から、2つを合わせて“Vitamine”とした。だが、のちにアミンの構造ばかりでないことが分かったので、eが外され“vitamin”となった。

 なお、同じ頃、日本の化学者の鈴木梅太郎が同じ物質を発見し、「オリザニン」と名付けていた。しかし、論文が日本語だったためにあまり評価されず、「ビタミン」が定着した。

仮の名称だったビタミン

 その後も欠乏症を防ぐ物質が見つかっていった。油に溶けるものはビタミンA、水に溶けるものはビタミンB、壊血病を予防するものはビタミンCといったように、発見順にアルファベットが振られた。多くの科学者がビタミンを見つけていくと、次々とアルファベットで命名されていった。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。


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