現在カリフォルニア州サン・ディエゴ周辺で実施されているアメリカ、日本、カナダ、ニュージーランドによる総合的な水陸両用作戦の合同訓練である「ドーンブリッツ2013」(「夜明けの電撃戦2013」)の開催に対して中国政府がクレームをつけたことは、海兵隊内部の新聞でも大きく紹介された(“Marine Corps Times”、6月10日)。
もちろん、このような雑音は合同訓練実施にはなんの影響も及ぼしていないが、自衛隊が水陸両用戦訓練に参加することに対して中国が懸念を示していることは、まさに日米同盟にとっては好材料であることには疑問の余地はない。なんといっても日本に軍事的脅威を与えている国が嫌がることこそ、日本防衛にとっては必要なことなのである。
ただし、中国がなぜドーンブリッツへの自衛隊の参加に警戒を示しているのかに関しては、一部の日本マスコミの見方はあまりに単純すぎるように思える。
ドーンブリッツは離島奪還訓練ではない
ドーンブリッツ2013を「離島奪還訓練」と矮小化して捉えて「日米が合同で尖閣奪還訓練を実施している」と単純化した報道が目につく。つまり、尖閣諸島を手に入れようとしている中国共産党政府は「日米共同島嶼奪還訓練(=ドーンブリッツ)を阻止したかった」ということになるわけである。
もちろんドーンブリッツで実施されている多種多様の水陸両用戦訓練は、万一「尖閣諸島奪還」のような事態が勃発した際に、そして日本政府の願いがかなってアメリカが直接的軍事介入に踏み切った場合に、自衛隊が奪還作戦に参加するためには有用と言える(残念ながら、数年以内というタイムフレームでは、自衛隊単独での奪還作戦は不可能に近い)。
しかしながら、ドーンブリッツは日本のために実施されている水陸両用戦訓練ではなく、第一義的にはアメリカ海軍・海兵隊のための大規模な各種水陸両用作戦の総合的訓練の機会である。さすがの超軍事国家アメリカとしてもこのような本格的水陸両用戦訓練は予算的にも時間的にもしばしば実施できるわけではなく、アメリカ軍自身にとっても極めて貴重な機会なのである。
そのような珍しい訓練に同盟軍を加えることにより、アメリカ軍の水陸両用作戦能力も高まるし、同盟軍との共同作戦能力や艦艇・航空機・兵器の相互運用能力も涵養される。同時に、同盟軍にとっては様々な本格的水陸両用作戦に身をもって触れることができる極めて稀な機会ということになるわけである。
そして、多種多様の水陸両用作戦の訓練を実施することにより、もちろん個々の技術を研鑽することにもなるのであるが、それ以上に水陸両用作戦の大前提となる陸・海・空の統合作戦立案・実施能力を高めることになるわけである。